2021年 年頭によせて ―2020年中国重要法令回顧

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2020年は新型コロナウイルスのまん延により苦難の1年であったが、中国においてはより特殊な1年であった。年明けからの感染拡大が中国経済に打衝を与えたが、中国政府の効果的かつ適時の対策により、感染拡大が抑えられ、経済は回復を遂げている。その中で中国政府は「国内・国際の双循環」という政策を打ち出し、対外開放の推進を継続している。

この政策は立法にも反映されている。外商投資については、外商投資法及びその実施条例の施行とともに、2020年版の外商投資ネガティブリスト、外商投資安全審査弁法などが公布された。また、国の安全保護のため、輸出管理法、生物安全法、信頼できない実体リストなどが相次ぎ制定された。さらに、民法典の公布をはじめ、独占禁止、個人情報保護、固体廃棄物防止、刑法などの分野における法規制・法改正も進められた。そこで、本稿は、2020年に中国で施行された重要法令を整理のうえ、概説するものとしたい。

1.外商投資関連

(1)外商投資法実施条例の施行

2019年12月26 日、外商投資法実施条例(以下、「実施条例」という)が公布され、外商投資法と同時に2020年1月1日から施行された。このほかにも、「外商投資法の適用に関する最高人民法院の解釈」及び「外商投資情報報告弁法」をはじめ、一連の法令等の公布が 2019 年 12 月の最終週に集中して行われた。外商投資法及び実施条例においては、内外資一致の原則及びネガティブリスト制度の全面的な確立、5年の移行期間の設定、外商投資情報の報告義務、政府の政策承諾・契約の履行義務、行政的手段による技術移転強制の禁止、外商投資企業資金の越境使用の開放など、各方面に及ぶ規定により従来の外商投資規制が緩和され、40年近く実施されてきた外資三法に代わる最新の外商投資の法体制が構築された。

(2)ネガティブリスト・奨励類外商投資産業目録などの改正

外商投資の分野について、国家発展改革委員会と商務部は、次に掲げる法令を相次ぎ公布した。2020 年 6 月 23 日に「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2020 年版)」及び「自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2020年版)」、12月31日に「海南自由貿易港が外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2020 年版)、2020年12月27日に「奨励類外商投資産業目録」(2020年版)がそれぞれ公布された。この一連の法改正・公布により、外資参入ネガティブリストの項目がさらに削減されたほか、奨励類目録も拡大・調整され、中国の対外開放拡大の姿勢が窺える。

(3)「外国投資者の上場会社に対する戦略投資管理弁法」の意見募集

2020 年 6月18日、商務部、証券監督管理委員会等 6つの部と委員会は、共同で「外国投資者の上場会社に対する戦略投資管理弁法(改正草案意見募集稿)」(以下、「改正草案」という)を公布し、意見募集を行った。今回の改正草案の重点的な改正内容については、適用範囲の明確化と投資方法の増加、商務部の事前審査認可及び届出の廃止、投資障壁の大幅な低減、監督管理方式の刷新などが挙げられる。

(4)「外商投資安全審査弁法」の公布

外国投資者による中国国内企業の買収に対する安全審査制度は、2011年の「外国投資者の国内企業買収にかかる安全審査制度の設立に関する国務院弁公庁の通知」により設けられた。その後、2019年4月の国家発展改革委員会公告2019年第4号によって、外商投資安全審査申告の窓口が商務部から国家発展改革委員会に変更されたが、2020年12月19日に新たな「外商投資安全審査弁法」が公布され、2021年1月18日から施行される。この弁法は、外商投資法に定められる安全審査制度を具体化したものであり、特に安全審査の対象範囲の変更が注目されている。

安全審査の対象範囲について、これまでは2011年の国務院通知により、①外国投資者による軍需産業に従事する企業、重要な軍事施設周辺の企業、その他国防の安全に関わる企業の買収、②外国投資者が国家安全にかかる重要な農産品、エネルギー、資源、インフラ、運輸サービス、極めて重要な技術、重要設備の製造等に関わる企業を買収する場合であって、かつ実際の支配権を取得する可能性があるもの、とされていた。

これに対し、「外商投資安全審査弁法」では、「買収」のほか、外国投資者の独資による新規投資、中外合弁による新規投資なども対象範囲に加えられ、さらに「外国投資者がその他の方式により中国国内で投資」との包括的条項も設けられており、今後はVIEも安全審査の対象となりうる。また、産業面では、「重要文化製品及びサービス、重要情報技術及びインターネット製品とサービス、重要な金融サービス」も安全審査の対象範囲に含まれる。

2.民法典関連

(1)民法典の公布

2020年5月28日、中国初の民事基本法典である民法典が公布され、2021年1月1日から施行された。民法典は、「総則編」、「物権編」、「契約編」、「人格権編」、「婚姻及び家庭編」、「相続編」、「不法行為責任編」の7編、計1260条からなる。従来の各民事法律の規定を踏襲した民法典における重要な改正点については、抵当権に対する賃貸借権の対抗要件の厳格化、抵当権者の同意なき抵当物譲渡の承認、契約保全制度の整備、新たな典型契約類型の導入などが挙げられる。また、民法典のもう1つの特徴としては、「人」を重視することであり、他の大陸法系国の民法典にはない「人格権編」を独立して設け、「生命権、身体権及び健康権」、などの伝統的な権利を定めるとともに、近年広く関心を集めているプライバシー権や個人情報の保護につき、従来の関連法令よりも詳細に定めている。民法典の施行を控え、2020年12月末に最高人民法院は一連の司法解釈を新たに公布した。

(2)民間貸借司法解釈の改正

2020年8月19日、最高人民法院は「民間貸借事件の審理における法律適用の若干の問題に関する規定」(以下、「民間貸借司法解釈」という)の改正を行った。今回の改正の要点については、1年物LPRの4倍に引き下げられた利息の上限変更(この上限とは貸付け利息の上限のみならず、借入金元本を基準に利息、違約金、その他の費用及び遅延利息を含むあらゆる費用の上限を指す)、保護の対象外となる1年物LPRの4倍を超過した任意の利払いに関する方針の変更、金融機関から不当に取得した金銭の転貸行為の一律無効、貸付を業とすることの一律無効などが挙げられる。なお、2020年12月29日に「民間貸借司法解釈」の2回目の改正がなされ、2021年1月1日から施行された。この改正の要点としては、2020年8月20日前後に成立した民間貸借契約について、それぞれその時点で有効な司法解釈が適用され、異なる利息の司法保護の上限が設けられている。

3.国家安全関連

(1)輸出管理法の公布

2020年10月17日、輸出管理法が可決され、同年12月1日から施行された。輸出管理法の管理原則については、デュアルユース品目 、軍用品、核及びその他国の安全・利益、拡散防止等国際義務の履行に関する貨物、技術、サービス等の管理品目を定め、管理品目関連の技術資料等のデータも含まれることを明らかにした。管理方法については、管理品目リスト、臨時管理品目、キャッチオール規制、輸出許可及び特定の対象者に対する規制リストといった方法が採用されている。規制対象としては、管理品目の中国国内から国外への移転に対して禁止又は制限の措置を講ずるのみならず、中国の公民、法人及び非法人組織が外国の実体に管理品目を提供する行為についても「輸出」行為として規制するとともに、外国の実体が中国国内から管理品目を輸入した後、再び他国(地域)に輸出し、又は第三者に譲渡する行為もその規制対象とした。また、輸出管理法に違反する場合、行政処罰や刑事責任を受けなければならないとした。輸出管理法の公布・施行は、中国の輸出管理制度構築の始まりにすぎず、今後一連の関連法令・実施細則の制定が予想される。日系企業としては、その立法動向を引き続き注視していくとともに、各国の輸出管理が交錯する監督管理の「隙間」で合法的発展を図るため、各国の輸出管理制度を十分に理解し、自社の総合的な輸出管理コンプライアンスの水準を全面的かつ迅速に向上させることがますます重要となる。

また、輸出管理法と連動する法令として、商務部は 2020 年 9 月 19 日、「信頼できない実体リストに関する規定」を公布し、即日施行した。この規定は、計 14 条からなり、リスト制度の目的、職務遂行機関、リスト掲載の基準・手続・効果、救済方法などを定めている。

(2)生物安全法の公布

2020 年 10 月 17 日、生物安全分野の基本法とする生物安全法が可決され、2021 年 4 月 15 日から施行される。生物安全法は全十章 88 条からなり、生物安全の定義及び同法の適用範囲を明確にし、生物安全作業の監督管理体制を構築するとともに、11 項目の生物安全リスク防止のための基本制度を確立し、各種の生物安全に関する活動について、狙いが明確な規定をそれぞれ設けている。同法の施行により、生物安全分野の監督管理、法執行の全面的な強化が予測され、生物技術、医薬品、農業、牧畜業、食品、化粧品などの業界に属する企業にとっては、生物安全に関するコンプライアンスの面で大きな影響が生じるであろう。したがって、関連企業においてはコンプライアンス体制の構築を徹底することが望まれる。

4.独占禁止法関連

2020年の年始に独禁法改正草案意見募集稿が公布されてから、同年年末のインターネット業界大手数社に対する事業者結合申告懈怠の処罰まで、2020年は、中国独禁法をめぐる規定と実務のいずれにおいても多くの出来事が生じる1年であった。

法規定の面では、2020年1月2日に公布された独禁法改正草案意見募集稿は、独占協定(カルテル)の締結を幇助する行為にも規制の範囲を拡げ、インターネット関連事業者の市場支配的地位の認定に関する条項を追加し、罰則を著しく強化するとともに(刑事責任にも言及)、より厳格な証明責任を事業者に負わせるなど、規制強化の方向性を示した。独禁法の改正は既に全人代常務委員会2021年の立法計画に組み入れられたことから、2021年にその改正が期待される。

その後、2020年8月には『2019年独占禁止規定及びガイドライン編集』の出版を受けて、国務院独占禁止委員会の名義で制定した「自動車業界に関する独占禁止ガイドライン」、「知的財産分野に関する独占禁止ガイドライン」、「横の独占協定案件に関するリニエンシー制度適用ガイドライン」及び「独占案件事業者承諾ガイドライン」の4つのガイドラインが公布された。2020年10月23日には「事業者結合審査暫定規定」が公布され、同年12月1日から施行された。

また、独占禁止に関連するガイドラインについては、2020年9月に「事業者独占禁止に関するコンプライアンス遵守ガイドライン」、「企業海外独占禁止に関するコンプライアンス遵守ガイドライン(意見募集稿)」、10月に「原料薬分野独占禁止ガイドライン(意見募集稿)」、11月に「プラットフォーム経済領域独占禁止に関するコンプライアンス遵守ガイドライン(意見募集稿)」が相次ぎ公布された。

実務の面では、国家市場監督管理総局が公表したところ、2020年には同局による7件の支配的地位濫用事件に対する処罰事例、9件のカルテル事件に対する処罰事例があった。公表された処罰事例のうち、調査の拒絶・妨害に関するものが2件あった。他方、事業者結合申告については、2020年には12件の申告懈怠処罰事件が公表され、前年の18件と比較して減少となったが、年末にインターネット大手企業3社を同時に処罰し、かつ処罰金額が上限の50万元に達していたことから、2008年の独禁法の施行以降、同法の法執行動向は現在もっとも注目されているといえる。

5.個人情報保護及びデータ安全関連

(1)個人情報保護法(草案)の審議

2020 年 10 月 21 日、個人情報保護法(草案)が公布され、11 月 19日まで意見募集が行われた。個人情報の保護と監督管理に関して、中国における初の法律レベルの規定となるこの草案には、サイバーセキュリティ法などの法令及び実務上の監督管理の成果が詰め込まれている。その要点については、①サイバーセキュリティ法をベースに、「個人情報」の概念をさらに明確にすること、②個人情報の取扱いに関する適法性の根拠(例えば、個人の同意がある場合、契約の履行に必要な場合などの6つの状況)を明確にすること、③異なる状況下における個人情報主体の「同意」について細分化された規定を設け、特に「単独同意」又は「書面同意」の事由を定めること、④サイバーセキュリティ法におけるデータの現地化と越境セキュリティ評価に関する規則をさらに拡大させ、様々な種類のデータの出国ルートと出国条件を規定すること、⑤域外適用の効力を定めることなどが挙げられる。このほか、個人情報の共同取扱者の連帯責任、合理的な範囲内での公開済個人情報の取扱い、個人の個人情報取扱いに関する各種の権利及び違法行為に対する法的責任なども定められている。

(2)新たな「個人情報安全規範」の公布

2020 年 3 月 6 日、個人情報保護システムにおける最重要ガイドラインである改正後の「情報安全技術 個人情報安全規範」(GB/T35273-2020)(以下、「新規範」という)が公布され、同年 10 月 1 日から施行された。この新規範では、2017年版の規範と比べて、「授権同意の例外」、「アカウントの抹消」、「責任部門及び人員」、「個人情報の処理活動の記録」、「個人情報主体による自己決定の実現方法」等に関する現行規範の内容に修正を加えたほか、「複数の業務機能の自己選択」、「ユーザープロファイリング 」、「個別化展示 」、「異なる業務目的のために収集した個人情報の集合・融合」、「第三者の接続管理」、「個人情報安全工程」といった新たな規定が設けられており、個人情報保護のコンプライアンスを実現するための重要な指針になるといえる。

(3)「個人情報安全影響評価ガイドライン」の公布

2020年 11 月 19 日、国家市場監督管理総局及び国家標準化管理委員会が「情報安全技術 個人情報安全影響評価ガイドライン」( GB/T 39335-2020)を公布し、2021 年 6 月 1 日から施行される。同ガイドラインは、主として、評価実施の価値、評価の責任主体、評価の基本原理、評価実施時に考慮すべき要素、評価実施の手続等について詳細な規定を設けている。このほか、その附属文書においては特定の事情下で行われる評価の具体的な方法が例示されていることから、将来における個人情報保護法の施行を大きく支えるものとなりうる。

(4)データ安全法(草案)の審議

個人情報保護をめぐる立法活動の推進とともに、データ安全分野での基礎的な法律となるデータ安全法(草案)が 2020 年 6 月 28 日に公布され、 8 月 16 日まで意見募集が行われた。この草案は、総則、データの安全と発展、データ安全管理制度、データ安全保護義務、政務データの安全と開示、法的責任、付則の計七章 51 条からなり、サイバーセキュリティ法に定められるデータの等級分類制度のさらなる整備、重要データの保護方法についての各地域各主管当局への制定権限の付与、データ取引の各段階における主体の安全保護責任の明確化、データ活動における国家安全審査制度の確立、域外管轄効力の明確化、政務データの公開など多方面にわたり明確化を図っている。

各企業においては、個人情報保護及びデータ安全に関連する立法の進捗状況を注視するとともに、自社の業務状況に基づいて対応策を定め、データ・個人情報の収集、保存、利用、取引等の行為に関するコンプライアンスを遵守することが望まれる。

6.固体廃棄物法の改正

2020 年 4 月 29 日、改正版の固体廃棄物環境汚染防止法(以下「新固体廃棄物法」という)が可決され、2020 年 9 月 1 日から施行される。新固体廃棄物法は、固体廃棄物処理の各段階における主体の責任を更に細分化し、工業固体廃棄物と危険廃棄物に対する監督管理を強化するとともに、企業の環境保護コンプライアンスについて新たな要求を定めた。改正の要点として、固体廃棄物環境汚染の責任主体の変更、工業固体廃棄物管理の強化、危険廃棄物の管理に関する新たな要求、法令違反の法的責任の厳格化などが注目に値する。

7.刑法改正案(十一)の可決

2020年12月26日、刑法改正案(十一)が可決され、2021年3月1日から施行される。企業と関係のある重要な改正点としては、伝染病防止妨害罪についての感染症対策に関する刑事責任の明確化、劣悪な薬品の生産・販売に関する犯罪の取締り強化、金融犯罪・証券犯罪に伴う法的責任の厳格化、知的財産権に関する犯罪の厳罰化などが挙げられる。一方、新たに設けられた罪名としては、生物安全法の施行に伴う人類遺伝子違法編集罪、「商業スパイ」(商業秘密情報の侵害行為)に関する犯罪、なりすまし犯罪などが挙げられる。

終わりに

本稿では、昨年2020年の中国における立法・実務の動向を振り返り、弊所が取り扱っている重要な分野の法令の変化につき概説した。今年も顧客の皆様により多く貢献できるよう、更なる高みを目指して邁進してまいる所存である。

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