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健康保険法・厚生年金保険法等の一部改正について

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 2022年10月1日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第40号)及び「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第66号)の一部が施行され、改正健康保険法・厚生年金保険法等が一部施行されます。

 

(1)   改正の概要について

▶ より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実をはかり、多様な就労に対応し、短期労働者や士業に対する被用者保険の拡大等の措置を図る観点等から、法改正がなされました。改正の概要としては、以下のとおりです。

①  短期労働者の適用拡大

②  適用事業所の範囲の見直し(士業適用業種の追加)

③  被用者保険の適用拡大に伴う老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置

④  被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

⑤  育児休業等期間中の保険料の免除要件の見直し

 なお、法改正の施行日については、日本の通常の法改正の時期である4月1日施行とすると各種事業所の人事異動等の時期と重なり人事に関する事務が繁忙となることからそれを避ける観点、1月1日施行とすると日本の法改正の時期としては異例となるためそれを避ける観点等より、2022年10月1日になったものとの説明がなされているようです。

 

(2)   短期労働者に対する適用拡大について

▶ 2022年10月1日から、「特定適用事業所」で働くパート・アルバイト等の短期労働者は、以下の要件を満たす場合、健康保険・厚生年金の被保険者となります。

①  週の所定労働時間が20時間以上であること

②  雇用期間が1年以上見込まれること

③  賃金の月額が88,000円以上であること

④  学生でないこと

▶ 現在厚生年金の被保険者数が501人以上事所で働く短期労働者は、健康保険・厚生年金の適用対象となっています。2022年10月1日から、被保険者が101人以上で働く短期労働者の加入が義務化され、2024年10月1日から、さらに51人以上で働く短期労働者も対象とされます。

 

対象

要件

現行

2022年10月~

2024年10月~

事業所

事業所の規模

常時500人超

常時100人超

常時50人超

短期労働者

労働時間

週の所定労働時間が20時間以上

変更なし

変更なし

賃金

月額88,000円以上

変更なし

変更なし

勤務期間

継続して1年以上使用される見込み

継続して2か月を超えて使用される見込み

継続して2か月を超えて使用される見込み

適用除外

学生でないこと

変更なし

変更なし

 

▶ 特定適用事業所で、2022年10月から新たに被保険者がいる場合は「被保険者資格取得届出」等の提出が必要となります。そこで、新たに被保険者となる短期労働者を把握し、従業員へ説明を行った上で、2022年10月以降の「被保険者資格取得届出」の準備を行うことが必要です。

 

(3)   適用事業所の見直し(士業の業種の追加)について

▶ 2022年10月1日から、常時5人以上の従業員を雇用している弁護士や公認会計士を始めとする各種士業の個人事業所は、健康保険・厚生年金保険強制適用事業所となります。

▶ 被保険者は、①正社員、②パート・アルバイトのうち、1週の所定労働時間および1月の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である者です。なお、個人事業所の個人事業主およびその家族については、通常被保険者とならないこととされています。

▶ 社会保険への加入に必要な届出としては、原則として、日本年金機構に「新規適用届」と「被保険者取得届」の提出が必要です。この他、「被扶養者異動届」などが必要になる場合があります。

 

(4)   被用者保険の適用拡大に伴う老齢厚生年金に関する経過措置について

▶ 老齢厚生年金を受給している65歳未満の方のうち、障害者(障害厚生年金の1級から3級に該当する障害の程度にある方)または長期加入者(厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある方)の特例対象者が厚生年金保険の被保険者になると、年金の定額部分(加給年金額が加算されているときは加給年金額も含む。)が全額支給停止となります。

▶ しかしながら、2022年9月30日以前から同じ事業所で引き続き働いている方が、①以下に記載の経過措置の対象者となる場合、②「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」を提出することで、年金の定額部分を引き続き受給することができます。

▶ 以下の①および②の条件に全て該当する方が経過措置の対象となります。
①2022年9月30日以前から障害者・長期加入者の特例に該当する老齢厚生年金を受給している方。
②2022年9月30日以前から同じ事業所で引き続き働いており、次のアからウのいずれかの理由により、2022年4年10月1日に厚生年金保険に加入する方。

ア 特定適用事業所要件の見直しによる資格取得(上記(2))
イ 短時間労働者の勤務期間要件の撤廃による資格取得(上記(2))
ウ 適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種追加)による資格取得(上記(3))

 

(5)   被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

▶ 2か月以内の期間を定めて雇用される場合は、健康保険・厚生年金保険の適用除外となりますが、2022年10月から、当初の雇用期間が2か月以内であっても、当該期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、雇用期間の当初から健康保険・厚生年金保険に加入となります。

▶ 具体的には、①就業規則、雇用契約等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合」が明示されている場合、②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約期間を超えて雇用された実績がある場合が上記に該当します。

 

(6)   育児休業等期間中の保険料の免除要件の見直しについて

▶ 育児休業等期間中の社会保険料の免除とは、被保険者から育児休業または育児休業に準ずる休業を取得することの申し出があった場合に事業主からの届出により、育児休業の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの社会保険料が免除となる制度です。

▶ 2022年4年10月から短期間の育児休業等を取得した場合への対応として、育児休業等の開始月については、同月の末日が育児休業等期間中である場合に加え、同月中に14日以上の育児休業等を取得した場合にも、保険料が免除されます。

▶ 賞与保険料は、1カ月を超える育児休業等を取得した場合に免除されます。

▶ 免除を受けるためには、「育児休業者等取得者申出書(新規・延長)/終了届」を提出する必要があります。

 

(7)   まとめ

▶ 上記のように種々の改正がなされておりますので、実務上は必要な各種届出等に適切に対応すること等が重要であると考えられます。

 

<関連URL>

令和4年10月から短時間労働者の適用拡大・育休免除の見直し等が行われます。

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0729.html#cms03

 

 

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