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日本の裁判制度はどのような仕組みか?

 

日本の裁判所は、最高裁判所、高等裁判所及び3つの下級裁判所(地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)で構成されている。

日本は仲裁に好意的な法域と考えられているが、日本には仲裁手続に関する専門の裁判所は存在しない。

下級裁判所

簡易裁判所は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない比較的少額の民事事件、比較的軽い罪の刑事事件、民事調停等を扱う。

地方裁判所は、一般的な民事事件、行政事件、刑事事件を扱う。

家庭裁判所では、家事事件(審判及び調停)、人事訴訟、少年事件等を扱っている。

高等裁判所

高等裁判所は、原則として、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の判決に対する控訴を扱う。ただし、民事事件では、簡易裁判所の判決に対する控訴は、地方裁判所に提訴される。高等裁判所は、いくつかの事項につき、特別な管轄権を有しており、例えば選挙に関連する行政事件等である。また東京高等裁判所に設置されている知的財産高等裁判所では、特許等に関する訴訟についての地方裁判所の判決に対する控訴や、特許庁の審決に対する訴えを扱っている。

最高裁判所

最高裁判所は、日本の裁判所の最高位に位置し、高等裁判所の判決に対する最終的な上告を扱う。民事及び行政事件の上告理由は、下級審の憲法違反又は重大な手続法令違反に限定されており、法令の解釈に重要な事項を含むものと認められる事件については、申立てにより最高裁が受理することができる。なお、刑事事件の上告理由は、憲法違反及び最高裁判例(判例がない場合は高裁判例)との相反に限定されている。

日本の裁判所は、公正な裁判の実施、裁判の誤りの防止及び人権の保護を目的として、「三審制」を採用している。この制度のもとでは、裁判所の判決に納得できない当事者は、原則として2回、上級裁判所に上訴する機会が与えられ、最高裁の判決は最終的なものであり、それ以上争うことはできない。さらに、最高裁は、事実認定ではなく、法律問題のみを審査する。

 

外国判決は、日本でも執行可能か?

 

外国判決は、民事訴訟法(平成8年法律第109号。以下「民訴法」という。)及び民事執行法(昭和54年法律第4号。以下「民執法」という。)に定められた承認及び執行の要件を充足する限り、日本で執行することができる。

承認の条件

民訴法第118条では、外国の裁判所が下した確定判決が効力を持つための要件を規定している。

 

(i) 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること(「間接管轄」ともいう。)

(ii) 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと

(iii) 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと

(iv) 相互の保証があること

 

日本の裁判所が自ら裁判権を行使することができる「直接管轄」とは異なる「間接管轄」の問題について、間接管轄の有無は、国際裁判権に関する民訴法の規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、外国裁判所の判決を日本が承認することが適当か否かという観点から条理に照らして判断される。民訴法第118条2号で要求される「送達」は、(ア)被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができたこと、(イ)被告がその防御の行使に支障がなかったこと、及び(ウ)送達が適用される条約を遵守していたことが必要である。また公序良俗に反するかは、外国判決の内容及び事実関係によって異なる。最高裁が日本の公序良俗に反すると判断した典型的な例として、懲罰的損害賠償の支払いを命じる判決がある(ギャンブルによる借金の支払いを命じる判決も同様に判断されるものと思われる。)。相互保証の要件は、日本で承認・執行が求められている外国判決が下された外国において、日本がその判決を承認・執行するのと同等な条件で、日本の裁判所が下した同種類の判決が承認・執行されることを要求するものである。

執行の要件

外国判決の承認の要件を満たしていれば、別途執行のための手続は必要でない。ただし、外国判決を執行するためには、民執法第24条に基づき、債務者の普通裁判籍の所在地(債務者の住所若しくは主たる事業所)又は請求の目的若しくは差し押さえことができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所から執行判決を取得する必要がある。執行判決が得られた場合、判決債権者は強制執行の申立てを行う必要がある。

なお、執行の要件は別途定められているが、承認の要件と重複する。執行判決を求める訴えは、(ア)外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は(イ)その判決が民訴法第118条の要件を満たさない場合に、却下される(民執法第24条5項)。

 

外国仲裁判断は日本でも執行可能か? 日本の仲裁判断は外国でも執行可能か?

 

いずれも執行可能である。日本では、国内仲裁判断の執行と外国仲裁判断の執行を区別していない。  外国仲裁判断を執行するためには、以下に示す承認と執行の要件を満たす必要がある。

 

承認の条件

外国仲裁判断は、「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(以下「ニューヨーク条約」という。)又は仲裁法(平成15年法律第138号。以下「仲裁法」という。)第45条に基づき認められる。また、ニューヨーク条約第7条1項に基づき、執行当事者は外国仲裁判断の承認を求める際に仲裁法に依拠することになる。

 

(i) ニューヨーク条約

日本の裁判所は、ニューヨーク条約の締約国で得られた仲裁判断を承認する。つまり、168カ国(2021年6月現在)の締約国で発行された仲裁判断は日本でも執行可能であり、それらの締約国で、日本の仲裁判断は執行可能である。

(ii) 仲裁法

仲裁法第 45 条は、ニューヨーク条約第 V 条(及びUNCITRAL(国際連合国際取引委員会)モデル法(以下「モデル法」という。)第 36 条)と実質的に同一の関連要件を定めている。外国仲裁判断は、以下の事由のいずれにも該当しない場合に承認される。

 

a) 仲裁合意は、当事者の行為能力の制限又は仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令により、その効力を有しないこと

b) 手続上の欠陥があること(仲裁地が属する国の法令の規定により必要とされる通知を当事者が受けなかったことなど)、一方の当事者が主張を述べる機会を与えられなかった、仲裁合意の範囲を超える事項に関する判断を含むものであること、又は仲裁廷が適切に構成されなかったこと

c) 仲裁判断が確定していないこと、又は仲裁判断がその国の裁判機関により取り消され、若しくは効力を停止されたこと

d) 仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること

e) 仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること

 

執行の要件

外国仲裁判断が承認された場合、仲裁法に基づき、執行することができる。執行するためには、まず日本の裁判所から仲裁法第46条に基づく執行決定を得て、その執行決定に基づいて強制執行の申立てを行う必要がある。なお、裁判所は、口頭弁論を行うことなく執行決定を下すことができるが、当事者双方が立ち会うことができる審尋を行う必要がある。

 

外国法準拠の契約書は日本で承認されるか?

 

承認される。法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号。以下「通則法」という。)第7条は、法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法によると規定している。また、仲裁法第36条第1項では、仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法律は、当事者の合意によって定められるものとし、この場合、一の国の法令が指定されている場合には、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなされると規定されている。この点、当事者による準拠法の選択は、明示的な選択に限らず、黙示的な選択を含む場合もあり、黙示的な場合には裁判所や仲裁地の選択、住所地、使用される文書の言語・用語・形式、取引との関連性の有無、取引の商業的目的等の要素が考慮され、決定される。

また、日本の絶対的強行法規(独占禁止法、外国為替法、労働法、消費者保護法、利息制限法、借地借家法等)は、当事者が反対の準拠法を選択した場合でも適用されると一般的に解釈されている。

特に、通則法では、消費者が、事業者に対して、消費者の常居所地法中の特定の強行規定を適用すべきとの意思を表明した場合、又は労働者が、使用者に対して、雇用契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべきとの意思を表明した場合、当該強行規定は、消費者契約又は雇用契約の成立及び効力に関して適用されると規定している。

 

契約書に準拠法の定めがない場合であって、日本の裁判所に提訴されたとき、どの国の法律が適用されるのか?

 

通則法第8条第1項では、法律の選択がない場合、法律行為の成立・効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法によると規定されている。このような状況においては、以下の事項が推定される。

 

a) 法律行為に関わる特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(又は当該事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

b) 法律行為の目的物が不動産である場合、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

c) 労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

 

なお、消費者契約の成立及び効力は、消費者の常居所地法によらなければならない。

 

仲裁の場合、仲裁法第36条第2項では、仲裁判断において準拠すべき法について合意がない場合、仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令を適用すると規定している。

 

日本で仲裁による解決を選択した場合、仲裁手続にはどの法律が適用されるか?

 

仲裁法の第1条、第10条及び第11条は、日本で行われる仲裁(国内事案及び国際事案)及び仲裁関連の裁判所が行う手続は、仲裁法、民訴法及び仲裁関係事件手続規則(平成15年最高裁判所規則第27号)に加えて、仲裁法に別段の定めがないその他の関連する日本の法令に準拠すると規定している。また、仲裁法は1985年のモデル法は取り入れているものの、2006年のモデル法の改正についてはまだ反映されていないことには留意すべきである。

 

また、日本はニューヨーク条約に加盟しているが、同条約は他の締約国の領域内で行われた仲裁判断にのみ適用される点についても留意すべきである。仲裁法は仲裁判断が行われた場所に基づいて仲裁判断を区別することはなく、仲裁判断がニューヨーク条約の非締約国で行われたものでも、国内で行われたものでも、上述のように通常の方法で執行されることになる。つまり、実際には、日本におけるニューヨーク条約の主な機能としては、日本での仲裁判断が日本国外の他の締約国で承認され、執行されるための手段を提供することにある。仲裁法は、仲裁廷の仲裁権限(仲裁合意の分離可能性とKompetenz-Kompetenz(すなわち、仲裁廷が自らの仲裁権限を決定する能力)の概念を認めている)、仲裁合意の方式、証拠取得のための裁判所による支援、日本の裁判所の限定的な監督の役割、仲裁判断の取消しと執行(この点に関しては、モデル法が提供する限定的な事由がそのまま採用されている)等の問題を扱っている。また、仲裁法 は、当事者が合意した場合、仲裁廷(又はその選任した一人若しくは二人以上の仲裁人)が当事者間の和解を試みることができると規定している。しかし、仲裁法は、暫定措置又は保全措置を講ずる裁判所の命令を強制的に執行するための手続については規定していない。

 

日本の裁判所から、外国の訴訟手続を差し止めるための命令を得ることはできるか?

 

そのような命令を得ることはできない。日本の裁判所では、国際礼譲を考慮して、外国の訴訟手続を差し止めるための命令を出さない。その代わり、日本の裁判所は、管轄権に関する決定を関連する外国の裁判所に委ねている。なお、直接の判例はまだないが、公序良俗上の理由から、外国の裁判所が出した訴訟差止命令は日本の裁判所では執行されない可能性が高いと考えられる。

 

裁判所が仲裁のために訴訟手続を停止する場合はどのような場合か?

 

仲裁法第14条第1項(3)は、仲裁合意の対象となる事項に関して本案が開始された場合、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならないと規定する。裁判所は、原則として、仲裁手続における手続を遂行し、仲裁判断をするための権限に関する決定が出るまで、仲裁のために訴訟手続を停止させない。唯一の例外は、裁判所が、仲裁合意が無効その他の事由により効力を有しない、若しくは仲裁合意に基づく仲裁手続を行うことができないと判断した場合、又は被告がすでに訴訟手続を進めている場合(例えば、法廷で、単に管轄権ではなく、本案について弁論をした場合)である。

 

仲裁を選択した場合、暫定的な救済を受けることは可能か? 緊急仲裁人が出した裁定は、日本でも執行可能か?

 

仲裁を選択した場合、暫定的な救済を得ることは可能である。請求者が暫定的な救済を得るには2つの方法があり、これらは仲裁法に基づく仲裁手続の開始前又は開始後に享受できる。

 

1つ目の選択肢としては、日本の裁判所に保全処分を求めることである。仲裁法第15条によると、仲裁合意がある場合でも、当事者は裁判所に保全処分の申し立てを行うことができる。この選択肢は、日本国内又は国外で行われる仲裁について利用可能であり、仲裁地が定まっていない場合にも利用可能である。

 

民事保全法(平成元年法律第91号。以下「民保法」という。)によれば、保全処分とは、仲裁手続に関して、申立人のために被申立人の資産を仮に差し押さえ(すなわち差押え)又は仮に処分(すなわち差止)する命令をいう。仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行することができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる(民保法20条)。それは、不動産、動産及び債権に対して行うことができる。

 

これらの命令は、民保法に基づいて裁判所が発せられるものであるため、日本でも執行可能である。ただし、外国の裁判所が発した保全処分は、確定判決とはみなされないため、日本では承認されず、執行されない。

 

2つ目の選択肢は、仲裁法第 24 条に基づいて仲裁廷に暫定措置又は保全措置の命令を求めることである。どちらの措置も、モデル法第17条に規定されている暫定措置に相当するものと考えられる。

 

しかし、日本の裁判所が行う命令とは異なり、仲裁廷が行う暫定措置又は保全措置は、日本において執行力を有しないため、実効性を得るためには、被申立人が手続を遵守する意思があるかどうかに依存する(すなわち、遵守しない場合の本案手続における地位への影響についてのおそれ)。実際には、仲裁手続に積極的に参加している当事者は、一般的に、仲裁廷が下した命令に自発的に従う傾向がある。

なお、日本は2006 年に改正されたモデル法の第 17 条AないしJを採用していないことについては留意すべきである。

 

緊急仲裁人については、仲裁法では規定されていないが、日本商事仲裁協会(JCAA)の商事仲裁規則(以下「商事仲裁規則」という。)の第5章第2節では、仲裁廷の成立前又は仲裁人が欠けている場合に、緊急仲裁人によって緊急の保全措置命令を求めることができると規定している。JCAAは、緊急保全措置命令の申立てがなされてから2営業日以内に緊急仲裁人を任命し、選任後2週間以内に、緊急仲裁人は決定をするように努める。しかし、仲裁廷が命じた暫定的救済と同様に、緊急仲裁人が命じた措置には執行力がなく、被申立人が手続を遵守する意思があるかどうかに依存する。

 

日本の法律では、すべての事案において仲裁可能か?

 

仲裁法第13条では、適用される法令に別段の定めがある場合を除き、仲裁合意は、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有すると規定されている。仲裁法の附則第4条を参照すると、仲裁法の施行後に締結された、将来において生じる個別労働関係紛争に関する仲裁合意も無効となる。また、モデル法とは異なり、附則第3条第2項により、消費者と事業者との間で締結された仲裁合意を、消費者は一方的に解除できる。

 

日本を仲裁地に選択した場合、日本ではどのような仲裁機関を利用できるか?

 

日本の主要な仲裁機関はJCAAである。日本で初めての商事仲裁機関として1950年に設立された。2016年から2020年の間に、JCAAに提出された案件は合計72件で、そのうち86%が当事者の一方が外国企業又は外国企業の日本子会社である案件である。

 

2016年から2020年の間にJCAAに提訴した当事者の数が多い上位5つの国・地域(日本を除く)としては、中国、韓国、台湾、米国、タイである。2016年から2020年の間に、JCAAに申し立てられた国際仲裁事件では108人の仲裁人が任命され、そのうち約48%が外国人である。

 

上述の商事仲裁規則に加えて、JCAAは、UNCITRAL仲裁規則(UNCITRAL規則の対象となる仲裁の効果的な管理・運営を支援することを目的とする)及びインタラクティヴ仲裁規則(大陸法の背景を有する者にとってより親しみやすいアプローチを提供することを目的とする)という2つの仲裁規則を当事者に提供している。

 

その他の仲裁機関は以下の通りである。

 

(i)  1926年に開始された海事関連の紛争を取り扱う日本海運集会所の海事仲裁委員会(TOMAC

 

(ii) 国際商業会議所国際仲裁裁判所(ICC)も、日本で毎年数件の国際仲裁を行っている。しかし、JCAAやTOMACのように、日本における仲裁のための事務局機能は持っていない。

 

日本において、紛争に対する第三者の資金提供(TPF)は認められているか?

 

日本は英米法の国ではないので、Maintenance(訴訟幇助)及びChamperty(利益配分約束付きの訴訟肩替り)は禁止されていない。。したがって、日本では第三者の資金提供を禁止する明示的な法律又は規制は存在ない。しかしながら、資金調達スキームにより、例えば、請求の管理又は実施に対する資金提供者側の関与の程度(もしあれば)に応じて、第三者による資金調達の取り決めが日本の弁護士法及び弁護士職務基本規程に違反する可能性がある。

 

日本において、仲裁により紛争を早期に解決する方法はあるか?

 

請求価値が5,000万円を超えない紛争の場合、当事者は商事仲裁規則の迅速仲裁手続を利用することができる。迅速仲裁手続では、原則として、審理は対面ではなく、書面上で行われ、仲裁判断を仲裁廷の成立から3ヶ月以内にするよう仲裁廷が努めることになっている。

 

日本において紛争を解決するためには、現地の法律事務所に依頼する必要があるか?

 

日本では、弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条により、原則として日本の弁護士のみが依頼者に法律事務の取扱いができる。

 

ただし、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和61年法律第66号。以下「外弁法」という。)第5条の3により、外国法事務弁護士は、国際仲裁事件の手続(当該手続の進行中に仲裁人が試み、又は当事者間で行われる和解の手続を含む。)及び仲裁合意の対象となっている民事上の紛争に関する調停手続(あっせんの手続を含み、民間事業者によって実施されるものに限る。)において、代理を行うことができる。また、外弁法第58条の2により、外国において法律事務を取り扱う業務に従事している外国弁護士(日本で登録されている外国法事務弁護士を除く。)は、その外国において依頼又は受任した国際仲裁事件の手続等(調停を含む)において代理を行うことができる。

 

日本で紛争を解決するために、どのような選択肢があるか?

 

日本で普及している代替的な紛争解決方法として、調停がある。

調停とは、中立公平な第三者である調停人が、紛争の当事者間の和解交渉を促進し、調停による和解合意を目指す制度である。

 

仲裁及び訴訟(歴史的に人気のあった紛争解決手段)とは対照的に、国際商事調停の最大の特徴は、当事者が結果を完全にコントロールし、調停人を通じて相手側から提案される可能性のある和解案を受け入れるかについて、最終的な発言権を持つことである。

 

さらに、仲裁及び訴訟の両方とは対照的に、調停によって時間及び費用を大幅に節約できる可能性がある。調停は、多くの場合、喧嘩腰ではなく、合意される可能性のある解決策は、裁判又は仲裁で達成されるものよりもはるかに多様なもので、商業的な性質を持っている(つまり、単なる法的な決定ではなく、当事者間の相違を解決するため、より商業的な合意をすることが多い)。その結果、調停によってビジネス関係を良好に保つことができる場合も多い。

 

日本では、裁判所が指揮及び統制する調停・和解が、代替的紛争解決手段として最も広く利用されている。しかし、このプロセスは、国境を越えたビジネス紛争の解決にはあまり適していない。調停の日程は一般的に都合が悪く、プロセスは通常、日本語でしか行われず、多くの調停人は、このようなプロセスを促進するための国際的な企業法務の経験を持ち合わせていない。実際、英米法の当事者の観点からすると、このプロセスで最も問題となるのは、裁判官と同一人物が調停人・和解あっせん人を務めるという事実であろう。当事者の中には、妥協点を探す段階において、自身の状況を完全に開示し、建設的な対応を取ることが困難と考えるものもいる。なぜなら、紛争が解決しない場合、裁判所に戻って、調停人としての役割を果たしていなければ知ることができなかったような事柄を知っている裁判官に対して、自分の主張立証を提示しなければならないとからである。

 

裁判所が指揮する和解あっせん制度の欠点を解消し、国際商業調停の違いや利点を日本で認知してもらうために、2018年11月に「京都国際調停センター」(JIMC)が設立された。JCAAでも調停業務を行っているが、JIMCは日本で初めての国際調停専門機関である。JIMCは、日本と外国の資格を持つ調停人で構成され、他の管轄権で採用されている方法と同様の方法で調停サービスを提供している。

 

日本の調停で得た和解合意を執行するにはどのような方法があるか?

 

実際には、和解合意が遵守されないことは稀である。民事調停法(昭和26年法律第222号)第16条では、調停において当事者間で合意が成立した場合、その内容は調書に記載され、裁判上の和解と同一の効力を有すると規定されている。したがって、当事者の一方がこのような和解契約に基づく義務を履行しない場合、他方の当事者は直ちにその記載に基づいて強制執行を開始する権利を有している。

 

しかし、裁判外で成立した和解契約は、他の商業契約と変わらず、当事者が強制執行手続を開始する権利はない。和解契約を遵守させ、契約を執行するためには、裁判所で契約違反の訴訟手続(又は和解契約に仲裁条項が含まれている場合には、仲裁手続も可能である)を開始する必要がある。これには時間がかかるものの、民執法第22条5号に基づく代替案がある。金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務不履行の場合には直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている場合、債権者は直ちにそのような証書に基づいて強制執行を開始する権利を有する。また、民訴法第275条により、民事上の紛争の当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。和解が裁判記録に記載されると、その記載は確定判決と同じ効力を有する。

 

将来的には、「シンガポール国際調停条約」(以下「シンガポール条約」という。)により、執行が容易になることが期待されている。シンガポール条約は、ニューヨーク条約が仲裁判断に対して行っているように、シンガポール条約の締約国において調停による和解合意の執行を容易にすることを目的としている。日本は、現在シンガポール条約に署名していないが、シンガポール条約の成立にかなり関与したため、いずれ批准することになると考える。

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