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中国:自動運転業界に対する地理データ取扱いの規制を明確化―自然資源部の新通知の解釈

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 2022年8月20日、中国自然資源部より「インテリジェント・コネクテッド・ビークルの発展の促進及び測絵地理情報の安全の維持に関する自然資源部の通知」(自然資規〔2022〕1号)という規定が公布され、スマートカー、インターネット配車予約車、インテリジェント公共交通、インテリジェント配送装置等の運営、サービス開発のために行われる地理データの取扱いについての規制が一層明確化された。

 同通知によると、インテリジェント・コネクテッド・ビークルに衛星測位受信モジュール、慣性計測装置、Webカメラ、レーザーレーダー等のセンサーを設置し、又は集積して走行、サービス提供又は路上試験を行う過程において、車両及び周辺道路の施設の空間座標、映像、点群、その属性情報等の地理情報データを収集し、保存し、伝送し、又は処理する行為は、「中華人民共和国測絵法」に定める測絵活動(測量製図活動)に属し、測絵に関する法規制を受けるとされている。なお、各種車載センサー及びインテリジェント・コネクテッド・ビークルの製造、集積、販売自体は、測絵活動に属しないものとして明確に排除されている。

 同通知の主な適用対象は、走行、サービス提供、路上試験等において地理データの収集及び処理活動を行うことが多い自動車メーカー、自動車関連サービス業者、スマート運転用ソフト開発業者等が想定されている。

 同通知により明確になった規制としては、まず、測絵活動のライセンス取得に関する問題が挙げられる。

 データの取扱い事業者が内資企業であるときは、法により相応の測絵の資格を取得し、又は相応の測絵の資格を有する事業者に相応の測絵活動の実行を委託しなければならず、外商投資企業であるときは、相応の測絵の資格を有する事業者に相応の測絵活動の実行を委託しなければならないとされている。

 測絵活動において必要とされる資格の種類は、その測絵活動の目的と測量の範囲により十種類のカテゴリーに分けられ、また、その利用する装備の種類、所属する技術者の人数と技術レベル、備えている品質保証及び情報安全体制のレベル等に応じた甲・乙という二つのレベル分けがある。

 うち、インテリジェント・コネクテッド・ビークルの走行、サービス提供、路上試験等において地理データの採集・処理を行うために求められる資格は、その採集するデータの種類、処理活動の目的及び内容に基づくケースバイケースの判断が必要になるが、実務上、「地理情報システム工程」のカテゴリーに含まれる「地理情報データ採集」、「地理情報データ処理」若しくは「地面移動測量」の資格、又は「ナビゲーション電子地図製作」という資格である可能性が高い。なお、これらの測絵資格は、いずれも外商投資企業においては取得できないものとされている。

 次に、同通知により明確になった規制は、地理データの海外への提供は当局の許認可を受けなければならないという点である。

 インテリジェント・コネクテッド・ビークルのアフターサービス又は運営サービスの提供を現に行う企業が関連する空間座標、映像、点群、その属性情報等の地理情報データを国外に伝送する行為を行い、又はそれを計画するときは、国の関連する法令を厳格に執行して対外提供許認可又は地図許認可の手続を法により行わなければならず、手続を行う前においてはデータ国外伝送行為を取りやめなければならない。

 地理データの海外提供に対するこのような規制は、測絵法及びその他既存の法令によって既に行われていたとの解釈も可能であるが、同通知によりその規制が明確化されと言える。これを機に当局が地理データの取扱いに対する管理をますます厳格化することが予想される。

 インテリジェント・コネクテッド・ビークルに関係する産業分野は、サイバーセキュリティ、データ安全、アルゴリズムの安全、輸出規制、サプライチェーンの安全など様々な安全保障問題と関わっており、参加する事業者も多岐にわたるため、コンプライアンスの問題が極めて生じやすい分野でもある。

 法体系が非常に複雑で、しかもここ数年は絶えず新たな法令、ガイダンス、指導文献、標準などが公布されていることから、リーガル及び技術の両面において社内のチェック体制を一層整備し、特にサプライヤーに対するコンプライアンスチェックに注意を払い、リーガル部門と他の事業部門との連携及び自社と他の関係事業者との情報共有を保ちつつ、安定した運営を図ることが望まれる。