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令和4年改正・電気通信事業法とウェブサービスへの影響

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【Summary】

令和4改正・電気通信事業法(令和5年6月16日施行)は、ウェブサービスを提供する事業者に、広く影響を及ぼす可能性がある。改正法の概要は、次のとおりである。

①届出が必要な「電気通信事業」の範囲拡大

・SNSや検索サービスなどを提供する大規模事業者は、改正により、新たに、同法の規制を受ける可能性がある。
・規制を受ける場合、届出等の対応が求められる。

②特定利用者情報にかかる規律の新設

・いわば、個人情報保護法に類似するような、新たな規制が設けられた。
・一部の大規模事業者には、今後、改正法に準拠した内規やプライバシーポリシーの整備等が求められる。

③外部送信に係る規律の新設(クッキー規制)

・ブラウザのクッキーなどを念頭に、新たな規制が設けられた。特に、いわゆるサードパーティークッキーを実装している場合、規制が及びうる。
・規制対象者は、(一定の条件はあるものの)大規模事業者に限定はされていない。つまり、スタートアップ企業などでも規制を受けうる点に留意が必要である。
・規制を受ける場合、プライバシーポリシーの改定等の対応が求められる。

④その他第三号事業に対する規制強化

・従来、同法の規制がほとんど及ばなかった、いわゆる「第三号事業」についても、規制が強化された(行政処分等の対象になった。)。
・特に、大規模事業者には、一定の報告義務が課される点に留意が必要である。

 

1. はじめに

 令和4年6月に成立した改正電気通信事業法(以下「改正法」という。)[1] [2] [3]では、ブラウザのクッキーを想定した規制など、ウェブサービスに関する規制が盛り込まれた。これにより、検索サービス、SNS、ブログなどの各種ウェブサービスを提供する事業者は、改正法の規制を受ける可能性がある。

 

[1] 電気通信事業法の一部を改正する法律(令和4年法律第70号)(未施行)
[2] 電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令(令和5年総務省令第2号)(未施行)
・「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」 (https://www.soumu.go.jp/main_content/000837586.pdf
[3] なお、最近の動きとして、令和5年1月30日、総務省は、改正法対応の電気通信事業参入マニュアル [追補版]等を公開した。
・電気通信事業参入マニュアル [追補版](https://www.soumu.go.jp/main_content/000477428.pdf)
・電気通信事業参入マニュアル(追補版)ガイドブック (https://www.soumu.go.jp/main_content/000799137.pdf)

 

 しかし、いきなり、「電気通信事業」といわれても、あまりピンと来ない方もいるかもしれない。また、同法の構造は複雑な面があり、未だ、十分な検討ができていない企業も少なくないのではないだろうか。

ちなみに、同法は、一部の規定を除き、令和5年6月16日から施行されることとされ[4]、施行も差し迫ってきた。規制が及ぶ場合、プライバシーポリシー等の改定の準備なども必要となりうる。

 

[4] 電気通信事業法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和4年政令第342号)

 

 そこで、本稿では、ウェブサービスに関連する電気通信事業法の改正点につき、同法の規制構造も踏まえて整理・解説する。

本稿の原稿は2023年2月下旬頃に作成されたものであり、本稿の内容には、今後変更されうる流動的な部分を含んでいる点に留意されたい。

 

2. 現行法の規制枠組み(令和5年6月16日より前の状況)

(1) 概要

 まず、最初に、現行の電気通信事業法(以下「現行法」という。)について、簡単に触れておきたい。同法は、概要、「電気通信事業」[5]を「営」む者[6]、を規制対象としている(現行法第9条、第16条、第164条第1項・第3項等)。規制態様は、次のようなフローチャートに従い、3つのパターンに分けることができる。この基本構造自体は、今回の改正後も変わりはない。

【フローチャート】

①登録が必要な電気通信事業(現行法第9条)

 一定規模の設備を設置して行う事業であり、NTT東日本やKDDIなどが行っている事業が該当する。「電気通信事業」と聞いて、一番イメージしやすい事業形態といえる。登録をした事業者は、「電気通信事業者」として、各種規制を受ける。

②届出が必要な電気通信事業(現行法第16条)

 自ら設備を設置する場合であっても規模が小規模なもの、あるいは、設備を設置しない事業で一定の条件を満たす場合(他人の通信を媒介する役務など)が該当する。こちらも、届出をした事業者は、「電気通信事業者」として、各種規制を受ける。

③登録・届出が不要な電気通信事業(現行法第164条第1項)[7]

 電気通信事業ではあるものの、登録も届出も不要な類型である。このうち、特に、第164条第1項第3号に該当する事業を、「第三号事業」と呼ぶ(今回の改正でもキーワードの1つとなる。)。第三号事業の具体例としては、SNS、オンライン検索サービス、オンラインショッピングモール、各種情報のオンライン提供サービスが挙げられる。

 注意点として、法規制の多くは適用除外となるものの、現行法第3条と第4条の規制は及ぶため、留意が必要である(現行法第164条第3項)。

 

[5] 「電気通信事業」(現行法第2条第4号)とは、概要、以下のように定義されている。
   ①「電気通信役務を」
   ②「他人の需要に応ずるために提供する」
   ③「事業」
 このうち、①は、以下のとおり定義されている(現行法第2条第3号。なお、①-1は、①-2の例示と解される。)。
   ①-1:電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、
   ①-2:その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること
 また、総務省見解では、①-2は、以下のとおり広く解釈されている。
・電気通信設備(サーバーなども含む。)を他人の通信のために運用することを意味する。
・その際、設備を所有している必要はない(利用権限があれば足りる)。
・「他人の通信」は、他人と自己との通信を含む。
 その結果、(誤解をおそれずに言えば)基本的に、SaaS、SNSその他のウェブサービスは、ユーザー(他人)に、サーバー等を利用させている、という観点から、①-2に該当して「電気通信役務」に該当する可能性が高い。
 次に、②の要件に関しては、自己の需要に応ずるために電気通信役務が提供される場合は、該当しないとされる。例えば、自社商品を販売するためのECサイトは、②に該当しない。他方、第三者が商品を出品できるECモール(販売プラットフォーム)を運営するような場合、②に該当しうる。
 最後に、③の要件は、主体的・積極的意思、目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいう。より、具体的には、一時的に提供されるものや、電気通信役務以外のサービスに付随して電気通信役務の提供を行うことは含まない。例えば、ホテルの宿泊客に提供されるインターネット接続サービスは、付随的なものであり、③を満たさないとされる。しかし、ウェブサービスに関しては、総務省の見解は厳しく、サービスの一部の機能であっても、付随的なものとは判断されない点に留意が必要である(前掲[3]参照)。
[6] 「営」む(現行法第9条、第16条、第164条第3項等)とは、利用者に対して、電気通信役務を反復継続して提供して、その対価として料金を徴収することにより電気通信事業自体で利益を得ようとすることをいう。注意点として、ウェブサービスの場合、利用者から料金を徴収しない場合であっても、広告料収入を得ている場合は、営むに該当する。
[7] 【現行法第164条第1項】
この法律の規定は、次に掲げる電気通信事業については、適用しない。
一 専ら一の者に電気通信役務(当該一の者が電気通信事業者であるときは、当該一の者の電気通信事業の用に供する電気通信役務を除く。)を提供する電気通信事業
二 その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。)又は同一の建物内である電気通信設備その他総務省令で定める基準に満たない規模の電気通信設備により電気通信役務を提供する電気通信事業
三 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務(ドメイン名電気通信役務を除く。)を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業

 

(2) 第三号事業(現行法)と他人の通信の媒介

 概して、ウェブサービスは、電気通信事業の定義に該当しやすい([5]参照)。もっとも、現行法では、多くのウェブサービスは、第三号事業に該当し、同法の大半の規制が適用除外となる。そのため、あまり、自らが電気通信事業に該当しているという感覚がないかもしれない。

この点、現行法における第三号事業は、概要、以下を満たす事業である(現行法第164条第1項第3号)。

  (a) 電気通信事業であって、

  (b)「他人の通信を媒介」せず、

  (c)「電気通信回線設備を設置」せず

  (d) ドメイン名電気通信役務ではない

 このうち、特に、(b)の要件を満たすか否かがポイントとなる。この(b)に関連し、総務省は、ウェブサービスについて、以下の2つの要件のいずれも満たす場合に、「他人の通信を媒介」に該当するという基準を示している(前掲[3]参照)。

  (i) 加工・編集を行わない(本質的な内容の改変を行わない)

  (ii) 送信時の通信の宛先として受信者を指定している

 これは、いわば、特定の者に限定された通信(1対1、あるいは、特定のグループ間の通信)であって、情報が右から左に流れるようなケースを意味する。具体的には、次のようなサービスが(i)(ii)を充足し、「他人の通信を媒介」するサービスとされる。

 ・メール

 ・SNSのダイレクトメッセージ

 ・特定の利用者のみが会話できるチャット(クローズドチャット)、

 ・特定の利用者のみが参加できるWeb会議システム

 他方、不特定の利用者間でメッセージのやりとりをする場については、(ii)を充足せず、「他人の通信を媒介」に該当しない。具体的には、公開の掲示板サイトなどである。

 以上から、現行法においては、特定の者に限定された通信を実装するようなサービス以外は、第三号事業として、規制の適用除外となることが多かった。

 

3. 改正法について(令和5年6月16日以降の状況)

(1) 改正法の概要

 以上を前提に、改正法のポイントについて解説する。まず、今回の改正のうち、ウェブサービスに関係しうるものの概要として、次の4点が挙げられる。

 ①届出が必要な「電気通信事業」の範囲拡大

 ②特定利用者情報にかかる規律の新設

 ③外部送信に係る規律の新設(クッキー規制)

 ④その他第三号事業に対する規制強化

(2) ①届出が必要な「電気通信事業」の範囲拡大

 従来、検索サービスやSNS等のサービスは、第三号事業として、届出が不要であった。改正法でも、原則的には同様であるが、例外として、利用者数が1000万人以上の大規模なサービス(提供者が総務大臣の指定を受けた場合に限る。)は、第三号事業から除外されることとなった[8]。第三号事業から除外された場合、当該事業者は、電気通信事業の届出が必要となる。

 

[8] 【改正法第164条第1項第3号】
電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務(次に掲げる電気通信役務(ロ及びハに掲げる電気通信役務にあつては、当該電気通信役務を提供する者として総務大臣が総務省令で定めるところにより指定する者により提供されるものに限る。)を除く。)を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業
イ ドメイン名電気通信役務
ロ 検索情報電気通信役務
ハ 媒介相当電気通信役務
【改正施行規則・第59条の2】
法第百六十四条第一項第三号の規定による指定及びその解除は、告示によつてこれを行う。この場合において、総務大臣は、当該指定及びその解除を受けることとなる者にその旨を通知するものとする。

 

具体的には、改正法における第三号事業は、概要、以下を満たす事業となった(改正法第164条第1項第3号)。

  (a) 電気通信事業であって、

  (b)「他人の通信を媒介」せず、

  (c)「電気通信回線設備を設置」せず

  (d) ドメイン名電気通信役務ではなく、

  (e) 検索情報電気通信役務(総務大臣が指定する者により提供されるもの)ではなく、

  (f) 媒介相当電気通信役務(総務大臣が指定する者により提供されるもの)でもない

 なお、「検索情報電気通信役務」とは、概要、以下の役務である[9]

・分野横断的な検索サービスであって(レストラン、商品など特定分野のみの検索サービスは対象外)

・利用者数が1,000万人以上のもの

 また、媒介相当電気通信役務とは、概要、以下の役務である[10]

・不特定者間の情報の送受信を実質的に媒介するサービス(テキスト、動画又は音声によるSNS、登録制掲示板、登録制オープンチャット、動画共有プラットフォーム、ブログプラットフォーム等。主として利用者間の交流を目的とするもの。)であって、

・利用者数が1,000万人以上のもの

 上記利用者数は、前年度における一月当たりの平均値による。また、カウントする際は、契約締結又は利用登録した者に限られる(改正施行規則第59条の3・第4項第2号カッコ書き)。逆に言えば、利用登録やログインといった概念が一切なく、誰でも利用できるサービスであれば、どれだけアクセス数が多くとも、検索情報電気通信役務や媒介相当電気通信役務には該当しない。さらに、登録はしているものの登録しているだけで実際にサービスを利用していない利用者はカウントされず、アクティブ利用者、すなわち、実際にサービスの提供を受けた利用者がカウントされる(改正施行規則第59条の3・第4項第2号、同第59条の3・第5項第2号では「電気通信役務の提供を受けた利用者」と表現されている。)。

 

[9] 「検索情報電気通信役務」の定義に関連する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第164条第2項第4号】
検索情報電気通信役務 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して当該検索情報が記録されたウェブページのドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務
【ⅱ、改正施行規則・第59条の3第4項】
法第百六十四条第二項第四号の総務省令で定める電気通信役務は、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一 第二十二条の二の二十七第三号に掲げる電気通信役務であること。
二 前年度における一月当たりの前号に規定する電気通信役務の提供を受けた利用者(法第二条第七号イに掲げる者に限り、他の電気通信事業者に卸電気通信役務を提供する場合にあつては、当該他の電気通信事業者が当該卸電気通信役務を利用して提供する電気通信役務の利用者(同条第七号イに掲げる者に限る。)を含む。次項第二号において同じ。)の数の平均が一千万以上であること。
【ⅲ、改正施行規則・第22条の2の27第3号】
三 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して、当該検索情報が記録された全てのウェブページ(通常の方法により閲覧ができるものに限る。次条第三項第一号において同じ。)のドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務
【ⅳ、改正法第2条第7号イ】
七 利用者 次のイ又はロに掲げる者をいう。
イ 電気通信事業者又は第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下「第三号事業」という。)を営む者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者その他これに準ずる者として総務省令で定める者
ロ (略)
【ⅴ、改正施行規則・第2条の2】
法第二条第七号イの総務省令で定める者は、電気通信事業者又は法第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下「第三号事業」という。)を営む者から、その提供する電気通信役務を継続的に利用するための識別符号(法第二十七条の十二第二号に規定する識別符号であつて、当該識別符号に係る電気通信役務を利用しようとする者が提供する氏名若しくは名称、電話番号、電子メールアドレス又はこれらを組み合わせた情報に基づき作成されるものをいう。)を付与された者(電気通信事業者又は第三号事業を営む者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者を除く。)とする。
【ⅵ、改正法第27条の12第2号(抄)】
 ・・・識別符号(電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)・・・
[10] 「媒介相当電気通信役務」の定義に関連する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第164条第2項第5号】
媒介相当電気通信役務 その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又はその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務
【ⅱ、改正施行規則・第59条の3第5項】
法第百六十四条第二項第五号の総務省令で定める電気通信役務は、次の各号のいずれにも該当するものとする。
一 その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報(商品、役務又は権利に関する情報を除く。以下この号において同じ。)を記録し、又はその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であつて、主として不特定の利用者間の交流を目的としたもの(当該電気通信役務以外の電気通信役務に付随的に提供されるものを除く。)であること。
二 前年度における一月当たりの前号に規定する電気通信役務の提供を受けた利用者の数の平均が一千万以上であること。

 

(3) ②特定利用者情報にかかる規律の新設

 改正法では、「特定利用者情報」にかかる規律が新設された。これは、誤解を恐れずに言えば、電気通信事業における一定の利用者情報につき、個人情報保護法に類似するような規制を及ぼすものである。もっとも、「特定利用者情報」は、個人に関する情報には限られない。また、大規模な事業者を対象とした規制となっている。以下、詳しく述べる。

 ア 特定利用者情報の定義

 特定利用者情報とは、電気通信役務に関して取得する利用者に関する情報で、次のa.又はb.に該当するものをいう(改正法第27条の5、改正施行規則・第22条の2の21)[11] [12]。b.については、要するに、登録ユーザーの利用者情報などである[13]

a. 通信の秘密に該当する情報

b. 利用者(契約締結又は利用登録した者に限る。)を識別することができる情報で、次に掲げる情報の集合物を構成する情報

・利用者(契約締結又は利用登録した者に限る。)を識別することができる情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの

・上記のほか、利用者(契約締結又は利用登録した者に限る。)を識別することができる情報を一定の規則に従って整理することにより特定の利用者を識別することができる情報を容易に検索することができるように体系的に構成した情報の集合物であって、目次、索引その他検索を容易にするためのものを有するもの

 イ 規制対象者

規制対象となる者は、以下の者である[11] [12]

a. 以下の電気通信役務を提供する者であって、

(a) 無料サービスの場合

概要、前年度の、1ヵ月平均の登録利用者数(アクティブ利用者数、すなわち、サービスの提供を受けた利用者数に限る。)が1000万以上

(b) 有料サービスの場合:

概要、前年度の、1ヵ月平均の登録利用者数(アクティブ利用者数、すなわち、サービスを受けた利用者数に限る。)が500万以上

b. 電気通信事業者であって、

c. 総務大臣による指定を受けた者

 

 ポイントとして、規制対象は電気通信事業「者」であるため(b.)、登録又は届出をした者に限られる(改正法第2条第5号。なお、前記①記載の、総務大臣の指定により第三号事業から除外された結果、届出をした場合も含む。)。また、総務大臣の指定を受けた者に限られる(c.)。さらに、上記のとおり、利用者数に応じた規制となっており、この規制も、概ね、大規模な事業者を対象としたものといえる。

 

[11] 特定利用者情報の定義、及び、規制対象に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の5】
総務大臣は、総務省令で定めるところにより、内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する電気通信事業者を、特定利用者情報(当該電気通信役務に関して取得する利用者に関する情報であつて次に掲げるものをいう。以下同じ。)を適正に取り扱うべき電気通信事業者として指定することができる。
一 通信の秘密に該当する情報
二 利用者(第二条第七号イに掲げる者に限る。)を識別することができる情報であつて総務省令で定めるもの(前号に掲げるものを除く。)
【ⅱ、改正施行規則・第22条の2の19】
法第二十七条の五の規定による指定及びその解除は、告示によつてこれを行う。この場合において、総務大臣は、当該指定及びその解除を受けることとなる電気通信事業者にその旨を通知するものとする。
【ⅲ、改正施行規則・第22条の2の20】
法第二十七条の五の総務省令で定める電気通信役務は、電気通信事業報告規則(昭和六十三年郵政省令第四十六号)第二条第三項の表の報告対象役務の欄に掲げる電気通信役務ごとに次の各号に掲げる電気通信役務の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 その提供の開始時において対価としての料金の支払を要しない電気通信役務
前年度における一月当たりの当該電気通信役務の提供を受けた利用者(法第二条第七号イに掲げる者に限り、他の電気通信事業者に卸電気通信役務を提供する場合にあつては、当該他の電気通信事業者が当該卸電気通信役務を利用して提供する電気通信役務の利用者(同号イに掲げる者に限る。)を含む。次号において同じ。)の数の平均が一千万以上であるもの
二 その提供の開始時において対価としての料金の支払を要する電気通信役務
前年度における一月当たりの当該電気通信役務の提供を受けた利用者の数の平均が五百万以上であるもの
【ⅳ、改正電気通信事業報告規則・第2条第3項・表「報告対象役務」欄】
加入電話
携帯電話
IP電話(当該IP電話の提供のために電気通信番号規則別表第一号に掲げる固定電話番号又は同表第六号に掲げる特定IP電話番号を使用するものに限る。)
インターネット接続サービス
FTTHアクセスサービス
CATVアクセスサービス
BWAアクセスサービス
公衆無線LANアクセスサービス
仮想移動電気通信サービス
電子メールサービス
メッセージングサービス
検索サービス
ソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービス
その他電気通信役務
 
【ⅴ、改正法第2条第7号イ】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
     (中略)
七 利用者 次のイ又はロに掲げる者をいう。
 イ 電気通信事業者又は第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下「第三号事業」という。)を営む者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者その他これに準ずる者として総務省令で定める者
 ロ 電気通信事業者又は第三号事業を営む者から電気通信役務(これらの者が営む電気通信事業に係るものに限る。)の提供を受ける者(イに掲げる者を除く。)
【ⅵ、改正施行規則・第2条の2】
法第二条第七号イの総務省令で定める者は、電気通信事業者又は法第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下「第三号事業」という。)を営む者から、その提供する電気通信役務を継続的に利用するための識別符号(法第二十七条の十二第二号に規定する識別符号であつて、当該識別符号に係る電気通信役務を利用しようとする者が提供する氏名若しくは名称、電話番号、電子メールアドレス又はこれらを組み合わせた情報に基づき作成されるものをいう。)を付与された者(電気通信事業者又は第三号事業を営む者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者を除く。)とする。
【ⅶ、改正法第27条の12第2号(抄)】
二 ・・・識別符号(電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)・・・
【ⅷ、改正施行規則・第22条の2の21】
法第二十七条の五第二号の総務省令で定める情報は、次に掲げる情報の集合物を構成する情報とする。
一 特定の利用者(法第二条第七号イに掲げる者に限る。次号において同じ。)を識別することができる情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
二 前号に掲げるもののほか、利用者を識別することができる情報を一定の規則に従つて整理することにより特定の利用者を識別することができる情報を容易に検索することができるように体系的に構成した情報の集合物であつて、目次、索引その他検索を容易にするためのものを有するもの
【ⅸ、改正法第2条第5号】
電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による届出をした者をいう。

 

[12] 以下の資料も参考になる。
・令和4年9月「特定利用者情報の適正な取扱いに関するWG取りまとめ(概要)」
・令和4年9月「電気通信事業ガバナンス検討会特定利用者情報の適正な取扱いに関するWG 取りまとめ」
・令和4年9月12日「特定利用者情報の適正な取扱いに関するワーキンググループ 取りまとめ(案)に対する意見募集の結果及び取りまとめの公表」
・令和5年1月31日「特定利用者情報に係る電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説案について」
・「電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令案等に対する意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申」
[13]  b.は、「個人情報データベース等」(個人情報保護法第16条第1項)の定義に類似する表現となっている。
 

 ウ 規制内容

(ア) 情報取扱規程の策定、届出(改正法第27条の6)

 次に掲げる事項を含む、情報取扱規程(内規)を策定の上、届出が必要となる[14] [15]。規程変更時も届出が必要であり(改正法第27条の6第2項)、総務大臣は規程の変更を命ずることもできる(改正法第27条の7)。

・利用者情報の安全管理に関する事項

・委託先に対する監督に関する事項

・情報取扱方針の策定、公表に関する事項

・特定利用者情報の取扱状況の評価に関する事項

・特定利用者情報を取り扱う従事者に対する監督に関する事項

 なお、事業者によっては、個人情報保護法対応のために、上記に近い内規を既に整備済みであり、その微修正で対応できる場合も考えられる。

 

[14] 情報取扱規程に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の6】
前条の規定により指定された電気通信事業者は、総務省令で定めるところにより、特定利用者情報の適正な取扱いを確保するため、次に掲げる事項に関する規程(以下「情報取扱規程」という。)を定め、当該指定の日から三月以内に、総務大臣に届け出なければならない。
一 特定利用者情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該特定利用者情報の安全管理に関する事項
二 特定利用者情報の取扱いを第三者に委託する場合における当該委託を受けた者に対する監督に関する事項
三 第二十七条の八第一項に規定する情報取扱方針の策定及び公表に関する事項
四 第二十七条の九の規定による評価に関する事項
五 その他総務省令で定める事項
2 前条の規定により指定された電気通信事業者は、情報取扱規程を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を総務大臣に届け出なければならない。
【ⅱ、改正施行規則・第22条の2の22】
法第二十七条の六第一項の規定による届出をしようとする電気通信事業者は、様式第十五の四の届出書に、次に掲げる事項を内容とする情報取扱規程を添えて行わなければならない。
一 特定利用者情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該特定利用者情報の安全管理に関する次に掲げる事項
イ 組織的安全管理措置に関すること。
ロ 人的安全管理措置に関すること。
ハ 物理的安全管理措置に関すること。
ニ 技術的安全管理措置に関すること。
ホ 次条第三号ロ⑴、ハ又はニに規定する場合にあつては、当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の把握の体制に関すること。
二 特定利用者情報の取扱いを第三者に委託する場合における当該委託を受けた者に対する監督に関する次に掲げる事項
イ 委託先の選定の方法に関すること。
ロ 委託契約において定める特定利用者情報の取扱いに関すること。
ハ 委託先における特定利用者情報の取扱状況の把握の体制及び方法に関すること。
三 情報取扱方針の策定及び公表に関する事項
四 法第二十七条の九の規定による評価に関する次に掲げる事項
イ 当該評価の実施並びに当該評価の結果の情報取扱規程及び情報取扱方針への反映の体制に関すること。
ロ 当該評価を行う項目、方法及び頻度に関すること。
五 特定利用者情報を取り扱う従事者に対する監督に関する事項
2 法第二十七条の六第二項の規定による届出をしようとする電気通信事業者は、様式第十五の五の届出書を提出しなければならない。
【ⅲ、改正施行規則・第22条の2の23第3号(抄)】
三 (中略)
ロ (中略)
⑴ 外国に設置される電気通信設備に特定利用者情報を保存する場合(⑵に掲げる場合を除く。)
    (中略)
ハ 外国に所在する第三者に特定利用者情報の取扱いを委託する場合にあつては、当該外国の名称及び当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の有無
ニ 外国に所在する第三者が提供する電気通信役務であつて、情報の保存を目的とするものを利用して特定利用者情報を保存する場合にあつては、当該外国の名称及び当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の有無
【ⅳ、改正法第27条の7】
総務大臣は、特定利用者情報の適正な取扱いを確保するため必要があると認めるときは、第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者に対し、当該電気通信事業者が前条各項の規定により届け出た情報取扱規程を変更すべきことを命ずることができる。
2 総務大臣は、第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者が情報取扱規程を遵守していないと認めるときは、当該電気通信事業者に対し、利用者の利益を保護するために必要な限度において、情報取扱規程を遵守すべきことを命ずることができる。

 

(イ) 情報取扱方針の策定、公表(改正法第27条の8)

 次に掲げる事項を含む、情報取扱方針を策定し、公表することが必要となる[15]

・取得する特定利用者情報の内容に関する事項

・特定利用者情報の利用の目的及び方法に関する事項

・特定利用者情報の安全管理の方法に関する事項

・利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所、事務所その他の事業場の連絡先に関する事項

・利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所、事務所その他の事業場の連絡先に関する事項

・過去十年間に生じた通信の秘密や特定利用者情報の漏えい事故の時期及び内容の公表に関する事項

 なお、個人情報保護法第32条(保有個人データに関する事項の公表等)に類似する定めであり、事業者によっては、個人情報保護法対応のために、上記に近いプライバシーポリシーを既に整備済みであり、その微修正で対応できる場合も考えられる。

 

[15] 情報取扱方針に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の8】
第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、総務省令で定めるところにより、特定利用者情報の取扱いの透明性を確保するため、次に掲げる事項に関する方針(次項及び次条第二項において「情報取扱方針」という。)を定め、当該指定の日から三月以内に、公表しなければならない。
一 取得する特定利用者情報の内容に関する事項
二 特定利用者情報の利用の目的及び方法に関する事項
三 特定利用者情報の安全管理の方法に関する事項
四 利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所、事務所その他の事業場の連絡先に関する事項
五 その他総務省令で定める事項
2 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、情報取扱方針を変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
【ⅱ、改正施行規則・第22条の2の23】
法第二十七条の八第一項の規定による公表をしようとする電気通信事業者は、次に掲げる事項を内容とする情報取扱方針をインターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法により公表しなければならない。この場合において、当該事項については、利用者が容易に確認できるようにするものとする。
一 取得する特定利用者情報の内容(当該特定利用者情報を取得する方法を含む。)に関する事項
二 特定利用者情報の利用の目的及び方法に関する事項
三 特定利用者情報の安全管理の方法に関する次に掲げる事項
イ 安全管理措置の概要
ロ 次の⑴又は⑵に掲げる場合にあつては、当該⑴又は⑵に掲げる場合の区分に応じ、当該⑴又は⑵に定める事項
⑴ 外国に設置される電気通信設備に特定利用者情報を保存する場合(⑵に掲げる場合を除く。)
当該外国の名称及び当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の有無
⑵ ⑴に規定する電気通信設備が第三者により設置されたものである場合において、当該電気通信設備が設置された外国の名称を知ることが困難なとき
当該第三者の名称
ハ 外国に所在する第三者に特定利用者情報の取扱いを委託する場合にあつては、当該外国の名称及び当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の有無
ニ 外国に所在する第三者が提供する電気通信役務であつて、情報の保存を目的とするものを利用して特定利用者情報を保存する場合にあつては、当該外国の名称及び当該特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある当該外国の制度の有無
四 利用者からの苦情又は相談に応ずる営業所、事務所その他の事業場の連絡先に関する事項
五 過去十年間(法第二十七条の五の規定により指定されている期間が十年に満たない場合には、当該期間)に生じた法第二十八条第一項第二号イ及びロに掲げる事故の時期及び内容の公表に関する事項
【ⅲ、改正法第28条第1項第2号イ・ロ】
電気通信事業者は、次に掲げる場合には、その旨をその理由又は原因とともに、遅滞なく、総務大臣に報告しなければならない。
  (中略)
二 電気通信業務に関し次に掲げる事故が生じたとき。
イ 通信の秘密の漏えい
ロ 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者にあつては、特定利用者情報(同条第二号に掲げる情報であつて総務省令で定めるものに限る。)の漏えい
  (略)

 

(ウ) 毎事業年度における取扱状況を自己評価、取扱規程・取扱方針への反映(改正法第27条の9)

 直近の事業年度における社会情勢、技術の動向、外国の制度、サイバーセキュリティに対する脅威その他の状況の変化を踏まえ、少なくとも以下の事項に関し、毎事業年度、特定利用者情報の取扱いの状況について評価を行わなければならない。また、評価の結果、必要に応じて、情報取扱規程又は情報取扱方針を変更しなければならない。

・直近の事業年度における情報取扱規程及び情報取扱方針の遵守状況

・直近の事業年度における特定利用者情報の漏えい

[16] 取扱状況の自己評価等に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の9】
第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、総務省令で定めるところにより、毎事業年度、特定利用者情報の取扱いの状況について評価を実施しなければならない。
2 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、前項の規定による評価の結果に基づき、必要があると認めるときは、情報取扱規程又は情報取扱方針を変更しなければならない。
【ⅱ、改正施行規則・第22条の2の24】
法第二十七条の九第一項の規定による評価は、直近の事業年度における社会情勢、技術の動向、外国の制度、サイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。)に対する脅威その他の状況の変化を踏まえ、少なくとも次に掲げる事項について行うものとする。
一 直近の事業年度における情報取扱規程及び情報取扱方針の遵守状況
二 直近の事業年度における特定利用者情報の漏えい
2 前項の規定は、法第二十七条の五の規定による指定の日を含む事業年度の翌事業年度から適用する。この場合において、当該翌事業年度における同項の規定の適用については、同項中「直近の事業年度」とあるのは、「法第二十七条の五の規定による指定の日から当該指定の日を含む事業年度の最終日までの間」とする。
 

(エ)  統括責任者の選任・届出(改正法第27条の10)

 特定利用者情報にかかる一定の業務につき、統括管理をさせるための管理者(特定利用者情報統括管理者)を選任し、届出をしなければならない。解任についても同様に届出が必要となる。同管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、利用者に関する情報の取扱いに関する一定の実務の経験(原則3年以上)を有する者である必要がある(改正施行規則第22条の2の25)。

 

[17] 統括責任者の選任・届出に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の10】
第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、第二十七条の六第一項各号に掲げる事項に関する業務を統括管理させるため、当該指定の日から三月以内に、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、利用者に関する情報の取扱いに関する一定の実務の経験その他の総務省令で定める要件を備える者のうちから、総務省令で定めるところにより、特定利用者情報統括管理者を選任しなければならない。
2 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、特定利用者情報統括管理者を選任し、又は解任したときは、総務省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
【ⅱ、改正法第27条の6第1項各号(抜粋)】
一 特定利用者情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該特定利用者情報の安全管理に関する事項
二 特定利用者情報の取扱いを第三者に委託する場合における当該委託を受けた者に対する監督に関する事項
三 第二十七条の八第一項に規定する情報取扱方針の策定及び公表に関する事項
四 第二十七条の九の規定による評価に関する事項
五 その他総務省令で定める事項
【ⅲ、改正施行規則第22条の2の25】
法第二十七条の十第一項の総務省令で定める要件は、次に掲げる要件のいずれかに該当する者とする。
一 電気通信役務の提供を受ける者又は電気通信事業以外の事業における顧客に関する情報の取扱いに関する業務のうち、次のいずれかに該当するものに通算して三年以上従事した経験を有すること。
イ 電気通信役務の提供を受ける者又は電気通信事業以外の事業における顧客に関する情報の取扱いに関する安全管理又は法令に関する業務
ロ イに掲げる業務を監督する業務
二 前号に掲げる要件と同等以上の能力を有すると認められること。
【ⅳ、改正施行規則・第22条の2の26】
法第二十七条の十第二項の規定による届出をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した届出書を総務大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 選任し、又は解任した特定利用者情報統括管理者の氏名及び生年月日
三 選任し、又は解任した年月日
四 解任の場合にあつては、その理由
2 前項の届出書には、選任された特定利用者情報統括管理者が事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあること及び前条に規定する要件を備えることを証する書類を添付しなければならない。
【ⅴ、改正法第27条の11】
特定利用者情報統括管理者は、誠実にその職務を行わなければならない。
2 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者は、利用者の利益の保護に関し、特定利用者情報統括管理者のその職務を行う上での意見を尊重しなければならない。
 

(オ) 情報漏えい時の報告(改正法第28条第1項第2号ロ)

 特定利用者情報に関し、1000人を超える漏洩や、一定の外国政府への提供があった場合には、総務大臣への報告が必要となる。

 なお、1000という数字に関し、個人データの漏えい時における報告義務についても、同様の基準が定められているが(個人情報保護法第26条、個人情報の保護に関する法律施行規則第7条第4号)、電気通信事業法の場合は、漏えい対象が個人情報に限定されていない点に留意が必要である。

 

[18] 情報漏えい時の報告に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第28条第1項第2号ロ】
電気通信事業者は、次に掲げる場合には、その旨をその理由又は原因とともに、遅滞なく、総務大臣に報告しなければならない。
  (中略)
二 電気通信業務に関し次に掲げる事故が生じたとき。
イ 通信の秘密の漏えい
ロ 第二十七条の五の規定により指定された電気通信事業者にあつては、特定利用者情報(同条第二号に掲げる情報であつて総務省令で定めるものに限る。)の漏えい
  (中略)
2 電気通信事業者は、前項第二号イからハまでに掲げる事故が生ずるおそれがあると認められる事態として総務省令で定めるものが生じたと認めたときは、その旨をその理由又は原因とともに、遅滞なく、総務大臣に報告しなければならない。
【ⅱ、改正施行規則・第58条第1項】
法第二十八条第一項第二号ロの総務省令で定める情報は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 当該情報に含まれる利用者(法第二条第七号イに掲げる者に限る。第五十九条の三第五項第一号において同じ。)の数が千を超えるもの
二 特定利用者情報の適正な取扱いに影響を及ぼすおそれのある外国の制度に基づき、外国政府に提供を行つたもの

 

(4) ③外部送信に係る規律の新設(クッキー規制)

 いわゆる、クッキー規制などとも呼ばれている規制である。概要、プログラム等の指示によって、ユーザー側が知らないうちに、ユーザーの利用する機器から外部に対し、ユーザー情報などが送信される行為につき、一定の規制を設けるものである [19][20]

 この規制については、ブラウザのクッキー(後述)を強く意識した規制であるため、巷ではクッキー規制と呼ばれることも多い。もっとも、改正法の文言上、クッキーだけに限定した規制ではない点に留意が必要である(改正法の規制要件に該当する限り、例えば、ゲームなどのアプリにおける挙動であっても規制が及びうる。)。以下、詳述する。

 

 ア 規制対象行為

 規制対象となる行為は、「情報送信指令通信」であり、次のように定義されている(改正法第27条の12本文)。

・「情報送信指令通信」

 =利用者の電気通信設備が有する情報送信機能を起動する指令を与える電気通信の送信

・「情報送信機能」

 =利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能

 難解な定義ではあるため、ブラウザのクッキーを例に説明する(なお、総務省ウェブサイトにおける図 [20]なども参考になる。)。この点、前提として、ブラウザによりウェブページを閲覧する際の挙動として、次の点が指摘できる。

(Ⅰ) ウェブページを閲覧する際、ウェブサーバー(A)と、利用者のPCやスマートフォンなどの端末(B)との間で通信が行われる。

(Ⅱ) 特に、ウェブページ自体の情報(ウェブページのプログラムコードや、コンテンツを構成する画像など)が、AからBに送信される(Aから見れば送信、Bから見ればダウンロード。)。

(Ⅲ) その際などに、サーバーから受領したデータなどが、Bの機器に、「クッキー」と呼ばれる情報として保存されることがある。

(Ⅳ) 当該「クッキー」にかかる情報は、さらに、(Ⅱ)でダウンロードしたプログラムコードが動作した結果、外部(Aである場合も、A以外の第三者であることもありうる。)に送信されることがある。

 このうち、(Ⅳ)の送信が行われる場合、「情報送信機能」(「利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能」)がある、といえる。

 また、(Ⅳ)の原因となった(Ⅱ)は、「利用者の電気通信設備が有する情報送信機能を起動する指令を与える電気通信の送信」に該当する。

 そのため、上記のようなクッキーの利用が認められる場合は、(Ⅱ)の行為(Aのサーバーが、Bに対し、当該ウェブページのプログラムコードを送信する行為)が、「情報送信指令通信」に該当する。

 イ 適用除外

 「情報送信指令通信」の定義に該当するケースでも、以下の場合は、改正法の外部送信にかかる規制は適用除外となる。

(ア) ウェブサイトの表示等に必要となる情報

 まず、利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なものとして、以下に該当するものについては、規制が適用されない(改正法第27条の12第1号)。

a. 当該電気通信役務において送信する符号、音響又は影像を当該利用者の電気通信設備の映像面に適正に表示するために必要な情報その他当該電気通信役務の提供のために真に必要な情報

b. 当該利用者が当該電気通信役務を利用する際に入力した情報を当該利用者の電気通信設備の映像面に再表示するために必要な情報

c. 当該利用者が当該電気通信役務を利用する際に入力した認証に関する情報を当該利用者の電気通信設備の映像面に再表示するために必要な情報

d. 当該電気通信役務に対する不正な行為の検知等を行い、又は当該不正な行為による被害の軽減等を図るために必要な情報

e. 当該電気通信役務の提供に係る電気通信設備の負荷を軽減させるために必要な情報その他の当該電気通信設備の適切な運用のために必要な情報

(イ) ファーストパーティークッキー

 事業者が利用者に送信した識別符号を、今度は逆に、利用者が事業者に送信するケース(基本的に、ファーストパーティークッキーと呼ばれるもの。)についても、規制が適用除外となる(改正法第27条の12第2号)。

 ウ 規制対象者

 規制対象となる者は、電気通信事業者又は第三号事業を営む者であって、ブラウザその他のソフトウェアにより提供される以下の役務を提供する者である(改正施行規則第22条の2の27 )。特に、b.やd.は範囲が広く、他の改正法の規制と比べても、比較的多くのウェブサービス事業が該当しうる点に留意が必要である。

a. 他人の通信を媒介する電気通信役務

 例:LINEなど。

b. その記録媒体に情報を記録し、又はその送信装置に情報を入力する電気通信を利用者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の利用者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務

 例:SNS・電子掲示板・動画共有サービス、オンラインショッピングモールなど。

c. 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して、当該検索情報が記録された全てのウェブページ(通常の方法により閲覧ができるものに限る。次条において同じ。)のドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務

 例:オンライン検索サービスなど。

d. a.~d.に掲げるもののほか、不特定の利用者の求めに応じて情報を送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であつて、不特定の利用者による情報の閲覧に供することを目的とするもの

 例:各種情報のオンライン提供(ニュース配信、気象情報配信、動画配信、地図等)

 エ 必要となる対応

 規制を受ける場合であっても、以下のa.からd.のいずれかの対策をとれば足りる。実務的には、b.の方法が採用しやすいと思われる。具体的には、既存のプライバシーポリシーに必要な情報を追記する対応などが考えられる。

a. 一定事項の事前通知(改正法第27条の12本文)

b. 一定事項の事前公表(改正法第27条の12本文。容易に知り得る状態にする。)

c. 本人同意(改正法第27条の12第3号)

d. オプトアウト(改正法第27条の12第4号)

 なお、上記の一定事項とは、送信される情報の内容、送信先の氏名・名称、情報の利用目的である(改正施行規則第22条の2の29)。

 また、日本語であること、平易な表現とすること、文字が適切な大きさであること、容易に到達できるページであることなど、表現方法に細かな指定ある点に留意が必要である(改正施行規則第22条の2の28・第1項及び第3項〔公表の場合〕)。

 

[19]  外部送信に係る規律に関する、改正法、及び、改正施行規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第27条の12】
電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)は、その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。ただし、当該情報が次に掲げるものである場合は、この限りでない。
一 当該電気通信役務において送信する符号、音響又は影像を当該利用者の電気通信設備の映像面に適正に表示するために必要な情報その他の利用者が電気通信役務を利用する際に送信をすることが必要なものとして総務省令で定める情報
二 当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者が当該利用者に対し当該電気通信役務を提供した際に当該利用者の電気通信設備に送信した識別符号(電気通信事業者又は第三号事業を営む者が、電気通信役務の提供に際し、利用者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)であつて、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により当該電気通信事業者又は第三号事業を営む者の電気通信設備を送信先として送信されることとなるもの
三 当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信先の電気通信設備に送信されることについて当該利用者が同意している情報
四 当該情報送信指令通信が次のいずれにも該当する場合には、当該利用者がイに規定する措置の適用を求めていない情報
イ 利用者の求めに応じて次のいずれかに掲げる行為を停止する措置を講じていること。
(1)当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により行われる利用者に関する情報の送信
(2)当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信された利用者に関する情報の利用
ロ イに規定する措置、当該措置に係る利用者の求めを受け付ける方法その他の総務省令で定める事項について利用者が容易に知り得る状態に置いていること。
【ⅱ、改正施行規則・第22条の2の27】
法第二十七条の十二の総務省令で定める電気通信役務は、次の各号のいずれかに該当する電気通信役務であつて、ブラウザその他のソフトウェア(利用者が使用するパーソナルコンピュータ、携帯電話端末又はこれらに類する端末機器においてオペレーティングシステムを通じて実行されるものに限る。次条において同じ。)により提供されるものとする。
一 他人の通信を媒介する電気通信役務
二 その記録媒体に情報を記録し、又はその送信装置に情報を入力する電気通信を利用者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の利用者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務
三 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して、当該検索情報が記録された全てのウェブページ(通常の方法により閲覧ができるものに限る。次条第三項第一号において同じ。)のドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務
四 前号に掲げるもののほか、不特定の利用者の求めに応じて情報を送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であつて、不特定の利用者による情報の閲覧に供することを目的とするもの
【ⅲ、改正施行規則・第22条の2の28】
法第二十七条の十二の規定により利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信を行おうとするときは、次の各号のいずれにも該当する方法により、次条各号に掲げる事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。
一 日本語を用い、専門用語を避け、及び平易な表現を用いること。
二 操作を行うことなく文字が適切な大きさで利用者の電気通信設備の映像面に表示されるようにすること。
三 前二号に掲げるもののほか、利用者が次条各号に掲げる事項について容易に確認できるようにすること。
2 前項の利用者に通知する場合には、同項各号に掲げるもののほか、次の各号のいずれかに該当する方法により行わなければならない。
一 次条各号に掲げる事項又は当該事項を掲載した画面の所在に関する情報を当該利用者の電気通信設備の映像面に即時に表示すること(当該事項の一部のみを表示する場合には、利用者がその残部を掲載した画面に容易に到達できるようにすること。)。
二 前号に掲げる方法と同等以上に利用者が容易に認識できるようにすること。
3 第一項の利用者が容易に知り得る状態に置く場合には、同項各号に掲げるもののほか、次の各号のいずれかに該当する方法により行わなければならない。
一 情報送信指令通信を行うウェブページ又は当該ウェブページから容易に到達できるウェブページにおいて、次条各号に掲げる事項を表示すること。
二 情報送信指令通信を行うソフトウェアを利用する際に、利用者の電気通信設備の映像面に最初に表示される画面又は当該画面から容易に到達できる画面において、次条各号に掲げる事項を表示すること。
三 前二号に掲げる方法と同等以上に利用者が容易に到達できるようにすること。
【ⅳ、改正施行規則・第22条の2の29】
法第二十七条の十二本文の総務省令で定める事項は、情報送信指令通信ごとに、次に掲げる事項とする。
一 当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる利用者に関する情報の内容
二 前号に規定する情報の送信先となる電気通信設備を用いて当該情報を取り扱うこととなる者の氏名又は名称
三 第一号に規定する情報の利用目的
【ⅴ、改正施行規則・第22条の2の30】
法第二十七条の十二第一号の総務省令で定める情報は、次に掲げるものとする。ただし、当該情報をその必要の範囲内において送信する場合に限るものとする。
一 当該電気通信役務において送信する符号、音響又は影像を当該利用者の電気通信設備の映像面に適正に表示するために必要な情報その他当該電気通信役務の提供のために真に必要な情報
二 当該利用者が当該電気通信役務を利用する際に入力した情報を当該利用者の電気通信設備の映像面に再表示するために必要な情報
三 当該利用者が当該電気通信役務を利用する際に入力した認証に関する情報を当該利用者の電気通信設備の映像面に再表示するために必要な情報
四 当該電気通信役務に対する不正な行為の検知等を行い、又は当該不正な行為による被害の軽減等を図るために必要な情報
五 当該電気通信役務の提供に係る電気通信設備の負荷を軽減させるために必要な情報その他の当該電気通信設備の適切な運用のために必要な情報
【ⅵ、改正施行規則・第22条の2の31】
法第二十七条の十二第四号ロの総務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 法第二十七条の十二第四号イに規定する措置(以下この条において「オプトアウト措置」という。)を講じている場合にあつては、その旨
二 オプトアウト措置が法第二十七条の十二第四号イ⑴又は⑵のいずれの行為を停止するものであるかの別
三 オプトアウト措置に係る利用者の求めを受け付ける方法
四 利用者がオプトアウト措置の適用を求めた場合において、当該電気通信役務の利用が制限されることとなるときは、その内容
五 情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる利用者に関する情報(法第二十七条の十二第一号及び第二号に掲げるものを除く。)の内容
六 前号に規定する情報の送信先となる電気通信設備を用いて当該情報を取り扱うこととなる者の氏名又は名称
七 第五号に規定する情報の利用目的
[20] 以下の資料も参考になる。
・2022年11月4日付「外部送信規律に係る電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説案について」
・2022年3月16日「利用者に関する情報の外部送信の際の措置について」
・外部送信規律に関する総務省ウェブサイト

 

(5) ④第三号事業に対する規制強化

 以上の外、改正法では、第三号事業自体への規制が強化された。以下に示すとおり、行政処分等の対象にもなっている[21][22]

新たに第三号事業に適用されることとなった規制
概要
第27条の12
外部送信に係る規律
第29条第2項
違反時の改善命令等
※外部送信規律違反に限る。
第166条第1項
・総務大臣は、事業に関し、報告させることができる
・立入検査
第167条の2
違反時の氏名公表
第186条
200万円以下の罰金(刑事罰)
※上記改善命令等に違反した場合に限る。
第188条
30万円以下の罰金(刑事罰)
※上記報告をしない・虚偽報告をした、あるいは、検査を拒むなどした場合

 

特に、特定利用者情報規制の閾値(検索サービス及びソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービス、並びに、無料サービスの場合:登録利用者900万以上、それ以外の場合:登録利用者450万以上)に近づいた第三号事業者には報告義務が課されている点に留意が必要である(法第166条第1項、改正電気通信事業報告規則・第2条第4項ないし第6項)。

 

[21] 【現行法第164条第3項】
第一項の規定にかかわらず、第三条及び第四条の規定は同項各号に掲げる電気通信事業を営む者の取扱中に係る通信について、第百五十七条の二の規定は第三号事業を営む者について、それぞれ適用する。
[22]  第三号事業に対する規制強化に関する、改正法、及び、改正電気通信事業報告規則は、次のとおりである。
【ⅰ、改正法第164条第3項】
第一項の規定にかかわらず、第三条及び第四条の規定は同項各号に掲げる電気通信事業を営む者の取扱中に係る通信について、第二十七条の十二、第二十九条第二項(第四号に係る部分に限る。)、第百五十七条の二、第百六十六条第一項、第百六十七条の二、第百八十六条(第三号中第二十九条第二項に係る部分に限る。)及び第百八十八条(第十七号中第百六十六条第一項に係る部分に限る。)の規定は第三号事業を営む者について、それぞれ適用する。
【ⅱ、改正法第29条第2項第4号】
総務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該各号に定める者に対し、利用者の利益を確保するために必要な限度において、業務の方法の改善その他の措置をとるべきことを命ずることができる。
四 第三号事業を営む者が第二十七条の十二の規定に違反したとき 当該第三号事業を営む者
【ⅲ、改正法第166条・第1項】
総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、電気通信事業者、第三号事業を営む者若しくは媒介等業務受託者に対し、その事業に関し報告をさせ、又はその職員に、電気通信事業者、第三号事業を営む者若しくは媒介等業務受託者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、電気通信設備(電気通信事業者又は第三号事業を営む者の事業場に立ち入る場合に限る。)、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
【ⅳ、現行法第167条の2】
総務大臣は、電気通信役務の利用者の利益を保護し、又はその円滑な提供を確保するため必要かつ適当であると認めるときは、総務省令で定めるところにより、この法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反する行為(以下この条において「法令等違反行為」という。)を行つた者の氏名又は名称その他法令等違反行為による被害の発生若しくは拡大を防止し、又は電気通信事業の運営を適正かつ合理的なものとするために必要な事項を公表することができる。 
【v、改正法186条第3号】
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、二百万円以下の罰金に処する。
三 ・・・第二十九条第一項若しくは第二項・・・の規定による命令又は処分に違反したとき。
【ⅵ、改正法・現行法第188条】
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
十七 第百六十六条第一項・・・の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
【ⅶ、改正電気通信事業報告規則・第2条第3項】
次の表の報告対象事業者の欄に掲げる電気通信事業者又は電気通信事業法第百六十四条第一項第三号に掲げる電気通信事業(以下この条において「第三号事業」という。)を営む者は、同表の報告対象役務の欄に掲げる電気通信役務(検索サービス及びソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービス以外の電気通信役務については、その提供の開始時において対価としての料金の支払を要しないものに限る。)ごとに、様式第十五の六により、毎報告年度経過後一月以内に、当該報告年度における一月当たりの当該電気通信役務の提供を受けた利用者(同法第二条第七号イに掲げる者に限り、他の電気通信事業者に卸電気通信役務を提供する場合にあつては、当該他の電気通信事業者が当該卸電気通信役務を利用して提供する電気通信役務の利用者(同法第二条第七号イに掲げる者に限る。)を含む。以下この項及び次項において同じ。)の数の平均が、次の各号に掲げる区分(以下この項において単に「区分」という。)のいずれかに該当するかについて、書面等により総務大臣に提出しなければならない。ただし、報告年度における当該利用者の数の平均が該当する区分が、当該電気通信役務についてこの項本文の規定によりした報告のうち直近の報告に係る区分と同一である場合には、この限りではない。
一 九百万未満
二 九百万以上一千万未満
三 一千万以上
(中略)

 

(中略)
メッセージングサービス
メッセージングサービスを提供する電気通信事業者
検索サービス
検索サービスを提供する電気通信事業者又は第三号事業を営む者
ソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービス
ソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービスを提供する電気通信事業者又は第三号事業を営む者
その他電気通信役務
その他電気通信回線設備を設置して電気通信役務を提供する電気通信事業者又は電気通信回線設備を設置せずに他人の通信を媒介する電気通信役務を提供する電気通信事業者

 

【ⅷ、改正電気通信事業報告規則・第2条第4項】
前項の表の報告対象事業者の欄に掲げる電気通信事業者は、同表の報告対象役務の欄に掲げる電気通信役務(その提供の開始時において対価としての料金の支払を要する電気通信役務に限り、検索サービス及びソーシャル・ネットワーキング・サービスその他交流型電気通信サービスを除く。)ごとに、様式第十五の六により、毎報告年度経過後一月以内に、当該報告年度における一月当たりの当該電気通信役務の提供を受けた利用者の数の平均が、次の各号に掲げる区分(以下この項において単に「区分」という。)のいずれかに該当するかについて、書面等により総務大臣に提出しなければならない。ただし、報告年度における当該利用者の数の平均が該当する区分が、当該電気通信役務についてこの項本文の規定によりした報告のうち直近の報告に係る区分と同一である場合には、この限りではない。
一 四百五十万未満
二 四百五十万以上五百万未満
三 五百万以上
【ⅸ、改正電気通信事業報告規則・第2条第5項】
第三項の規定により、同項第一号に掲げる区分に該当する旨の報告をすべき電気通信役務を提供する電気通信事業者及び第三号事業を営む者(当該電気通信役務について同項の規定によりした報告のうち直近の報告に係る区分が同項第二号又は第三号に掲げる区分に該当していた者を除く。)については、同項の規定を適用しない。
【ⅹ、改正電気通信事業報告規則・第2条第6項】
第四項の規定により、同項第一号に掲げる区分に該当する旨の報告をすべき電気通信役務を提供する電気通信事業者(当該電気通信役務について同項の規定によりした報告のうち直近の報告に係る区分が同項第二号又は第三号に掲げる区分に該当していた者を除く。)については、同項の規定を適用しない。

 

4. 最後に

 以上のとおり、令和4年改正・電気通信事業法と各種ウェブサービスへの影響を概観した。実務的な対応としては、特に、比較的広範に適用される外部送信規律との関係で、プライバシーポリシーの改定等が必要か否か、検討が必要になろう。未だ、改正法への影響を検討できていない場合は、早めの検討をお勧めしたい。

以 上

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