「数」が語る税関行政処罰 — 2020年度上海税関行政処罰ビックデータ解析

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疫病の洗礼を受け、税関が港湾疫病予防抑制の統括的な推進及び貿易の安定的な増加の促進を目指す中、行政法執行は国内外の防疫過程の発展及び貿易構造の変遷につれて一連の重大な変化を生じさせた。金杜法律事務所税関外貨チームは、税関の行政法執行の状況を継続的に注視するとともに、2020年に上海税関が公開した行政処罰事件の状況及びデータについて異なる次元から整理・解析を行い、これを基礎に、我々の実務経験も踏まえ、企業の輸出入コンプライアンス制度の確立、税関調査への対応などに精密で地に根差した提案を行った。本稿は、これらの紹介を通じて、輸出入企業及び税関の専門的なリーガルサービスに携わる多くの者に参考を提供するものとしたい。

一、 主な特徴

我々がこれまでに上海税関サイトの政府情報公開欄より得た情報によると、上海税関が2020年1月から2020年12月までに公開した行政処罰決定書は計1,035件、過料額は計3,000万元であった。2019年と比較して、税関全体の行政処罰事件に対する法執行の強度及び基準は、依然として比較的安定している。関連事件の整理分析からすると、2020年度に上海税関が処理した行政処罰事件の特徴は次のようにまとめられる。

  •  防疫物資輸出監督管理が強化された。主な特徴として、第1に、検査検疫行政処罰事例が増え、検査検疫行政処罰に関する事件の数は事件総数の4分の1に接近し、2019年の2倍近くとなった。第2に、防疫物資と関わる行政処罰事例が事件総数の2分の1に接近した。一面において、客観的な原因は、疫病の影響、防疫物資輸出入量の激増及び税関による相応の検査・監督管理の強化にあり、他面において、「関検合一」改革の徹底した推進につれて、税関は既に商品検査段階と関連する行政処罰法執行体系の段階的な整合・統一を行った。
  •  固体廃棄物に対する監督管理法執行の持続的な強化が効果を現し、固体廃棄物類処罰事件が全事件に占める比率が2019年の31%から2020年の12%に減少した。中国では2021年1月から固体廃棄物輸入全面禁止政策が正式に実施され、それに伴い、鋼鉄、真鍮等の再利用原材料に関する国家基準及び管理規範が制定され、

「数」が語る税関行政処罰 - 2020年度上海税関行政処罰ビックデータ解析

要求に適合する再利用材料には合法的な輸入の方法が提供された一方、関連業務に従事する企業には新たなコンプライアンスの課題が提示された。

  • 自主開示への報奨が日増しに顕著となっており、コンプライアンスという「武器」の効果が現れている。自主開示が行われた事件は、その処罰の結果からみると、最終的に当事者の不処罰を決定するケースが以前よりも増えており、たとえ行政処罰の決定が下りても、自主開示がなされた事件の処罰は、それが行われなかった事件よりも明らかに軽い。
  • 不実申告の事件が、税関密輸規則違反関連行政処罰事件における最多を占めている(44%)。これまでの不実申告は、価格やHSコードなどに関する事件が多発していたが、2020年に対外貿易救済措置が次々と定められた影響で、それら以外にも、原産地や価格約束(反ダンピング関税税率)等に関する不実申告事件が一定数を保っている。
  • 輸出コンプライアンス及び関連制度の確立につき、対外貿易企業によるその早期の重視が待たれる。違法行為の多くが輸入段階で行われているという一般的な印象とは異なり、2020年に公表された行政処罰決定書によると、輸出段階で行われた違法行為がほぼ「残り半分」を占め、2019年と比較して19%増という顕著な増加傾向となっている。

二、 具体的な行政処罰事件の検討

1. 税関行政処罰に適用される主な法令

上図が示すように、税関行政処罰実施条例に基づく処罰事例が最も多く、65%を占めている。その一方で、近年の中国においては固体廃棄物輸入取締特別行動を積極的に展開しており、企業のコンプライアンス意識が向上したことから、固体廃棄物関連の処罰事件は以前より明らかに減少し、12%にとどまる。他方、2021年1月に固体廃棄物輸入を全面的に禁止する政策が正式に始まり、鋼鉄、真鍮等の再利用原材料に関する国家基準及び管理規範が制定されたことから、要求に適合する再利用材料には合法的な輸入の方法が提供された一方、関連業務に従事する企業には新たなコンプライアンスの課題が示された。また、検査検疫に関する行政処罰事件の高度な発生率が今年度の統計の主な特徴の1つであり、税関行政処罰事件に占めるその割合は23%に達し、処罰事件の約4分の1が商品の検査検疫段階と関わるものとなっている。

2. 企業に多発する違法行為の類型

適用される法律及び事件における行為の性質に基づいて関連する違法行為の分類統計を行ったところ、最も多発する違法行為は輸出入段階における不実申告又は申告不履行であり、事件総数の44.4%を占めることが判明した。不実申告又は申告不履行の具体的な事情については、後ほどさらなる検討を行う。

ここで指摘しなければならないこととして、輸出管理法の施行後、同法の規定に適合する輸出管理違法行為に対しては、同法に基づいて税関により行政処罰が行われる。例えば、管理品目を許可なく輸出する行為を行い、違法所得がなく又はそれが50万元に満たないときは、50万元以上500万元以下の過料が適用され、その情状が重大なときは、輸出経営資格の取消しまで休業整頓が命じられる。中国の輸出管理領域の立法が不断に進展するにつれて、デュアルユース品目等の管理品目に対する法執行が強化され、規則違反を犯した場合、その行政責任がこれまで以上に重いものになると予測されることから、関連する業務に従事し又はそれを予定する企業においては、この点を十分に重視することが望まれる。

3. 不実申告を防止するため特に注意すべき項目

不実申告事件における誤申告の項目を取りまとめると下図のようになる。

不実申告の項目のうちHSコードが頻発する情勢にあり、約48%の事件がHSコード不実申告の状況と関わっているが、行政処罰決定書が公開され明らかになった事件の事実によると、HSコードの誤りは、第6類化学製品(第38章雑化学品)、第7類プラスチック及びその製品(第39章プラスチック及びその製品)、第15類卑金属及びその製品(第72、73章鋼鉄及び鋼鉄製品)及び第16類電気機械類製品(第84、85章機械器具、電気機械及び電気機器類商品)において多発している。

2020年においても、税関は輸出入貨物申告価格の検査を強化し、国際段運賃に対する特別審査行動を展開し、それにより海運付加費用(BAF/EBS/LSS等)申告漏れ事件の集中的な処理を行った。

4. 税関による一般的な行政違法行為の処罰

税関行政処罰の方法には、警告、違法貨物の没収及び過料がある。過料3万元(高級認証企業は処罰金額が3万元を超える行為があってはならない)及び10万元(一般認証企業は3万元を超え10万元以下の処罰金額となった行為が1回を超えてはならない)が税関信用等級評定に影響する重要な指標であることに鑑み、我々は、3万及び10万を処罰分布の2つの限界として、不実申告又は申告不履行関連事件に科せられた最高額の処罰金額の分布状況の統計をとったが、その統計データからすると、約21%の処罰が企業の信用等級に直接的な影響を及ぼしうる。

5. 自主開示の実際の効果

個别の事件における具体的な違法行為及び違法結果に基づき、対応する法規に定める罰則に照らして、我々は、自主開示が行われた事件における処罰の状況を整理した。その結果からは、自主開示が行われた事件に対し、税関はその具体的な事情に基づいて軽い処罰又は減軽された処罰を行っており、実際の処罰の結果は対応する罰則の関連規定よりはるかに軽いことがわかる。

自主開示と
関わる事件数

処罰の事情

対応する罰則

実際の処罰

10件

不実申告、税関の統計の正確性への影響

警告又は1000元以上1万元以下の過料

500元

12件

不実申告、税関の監督管理の秩序への影響

警告又は1000元以上3万元以下の過料

警告又は
500~2000元

1件

不実申告、国の許可証管理への影響

貨物の価値の5%以上30%以下の過料

不処罰

14件

不実申告、国の徴税への影響

納税遺漏額の30%以上2倍以下の過料

不処罰又は10%以下

3件

商品検査機関の検査を受けなければならない輸出商品の検査及び合格を経ない輸出

貨物の価格の100分の5以上100分の20以下の過料

5~7%

三、 コンプライアンスに関する提言

以上の検討に基づき、特定類型の事件が多発している現状について、我々は輸出入業務と関わる企業に次のことを提言する。

1. コンプライアンスを維持する「自主開示制度」及び「事前裁定制度」これら2つの武器の効果的な活用

自主開示制度自体が企業にもたらす利益については既に論じた。ここでは多くの企業に対し、自主開示があったとの認定を受けるには一定の要件を満たさなければならず、開示した内容が真実性又は全面性を欠き、その他違法行為を隠蔽したときは自主開示と認定されず、企業においては、「自白した者には寛大に」から「墓穴を掘る」へと転ずる苦境に直面する可能性に注意しなければならない。

事前裁定制度は、近年の税関改革で導入された新たなコンプライアンスの武器である。一定の要件を充足する場合、企業は実際に輸入を行う前に、関連する貨物の価格、分類、原産地など税と関わる要素について事前裁定を税関に申請することができる。実務において我々が知りえたところ、適切な税関事前裁定の申請は、通関効率の向上及び不実申告のリスク防止に役立つ。

2. 輸出入コンプライアンス制度の確立とその重視

具体的に論ずると、税関が重視する税、検査及び証書と関わる項目について、企業は定期的に、主に課税価格申告の真実性・完全性、商品の分類、輸入貨物の原産地申告、許可証書、関連会社との取引における価格設定制度をはじめとするコンプライアンス審査を行わなければならない。企業においては、日常の輸出入の運営を基礎に段階的・周期的な回顧的審査を行うとともに、関連する法律法規の改正に特に注意を払わなければならない。

3. 行政処罰事件への対応の十分な重視

税関行政処罰に関する調査への対応を支援した我々の経験から、企業に対しては、税関調査が開始された初期の重要な時期を逃すことなく、科学的な対応を十分に重視し、証拠を適切に収集して積極的に反証を行うことにより税関の理解を得て、法律上許される範囲の最善の結果へと到達することが提案される。

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